487# ウチからすれば ページ37
▼TAKAMINA
連日、怒涛の仕事で一日は終わる。帰ったら着替えてから食堂へ。昨日は遅くまで仕事で、劇場のお弁当だった。けれど今夜はパパコックの夕食。ケチをつけるつもりは無いが、美味しさならパパコックの料理の方が上。
入口でプレートを持ち、お皿を受け取るんだけど……。朝まではいつも通りの笑顔だった。なのに今のパパコックは眉を下げていて、何か気がかりなことがあるような。悩むみたいな。そんな顔で「たかみなちゃん、」と呼ばれる。
「たかみなちゃんなら、理由知ってるかな？」
「え？」
あれ。パパコックが指を差す。追った先には智恵理たち、選抜した研究生が揃い踏み。あの子たちもこの時間の夕食らしい。…………けれど、一人だけ。どうしたと突っ込まずにはいられない奴がいる。
食事のテーブルに肘をついて行儀が悪い、とか。今そんなことはどうでもいい。彼女の表情が気になった。彼方への負い目を含めても、研究生の中では一番話すA。最近はお互いに忙しくて。ゆっくり話していなかったな。
「どうしたー？ 何かあったら言えって言ったでしょ」
「……、たかみなさん」
背後から話しかけてやれば、四人揃って「おつかれさまです」。あんたたちもおつかれさま。早速Aの顔がなんとなく暗い理由を聞いてみた。本人は言わない。その代わり智恵理が説明してくれる。
………………なるほどね。Aが同期に遠慮をしなくなったのはいい兆候だと思ったけれど、今度はそういう弊害が出ちゃったんだ。それで？ 言ったのは後悔してないんでしょ？ なんでそんな顔してるの？
「時間差で心にじわじわ来てるんです」
「Aって、大人びているように見えて本当はまだまだ子どもだよね」
「何言ってるんですか。16歳は子どもです。たかみなさんたちが許してくれるなら、甘えたいですけど」
恵が「似合わない」と言う。Aは一瞥だけ、特に言い返さない。うん、いつもと違う。恵もそれは感じたみたい。一拍置いてから「あ、ごめん。ごめんね」と謝ってる。やばい、今度は無反応。
ウチは候補生の頃にもう聞いた。Aは「姉」でいることも嫌だったんだ。自分や他の襲名メンバーに、積極的に絡みに来たのはそれもあったんだろう。
Aは00だと後輩だ。だが同期には、今年は楚方という例外がいる。年齢的にも精神的にもAは先導する側だろう。あの中で彼女の位置は自宅と変わらない。つまり休まらない。先輩と関わる方が楽なんだ。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
