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「真琴は自分で限界を決めちゃう。無自覚に可能性を潰す。だから先に行けない。……それでも真琴を応援する人達がいるのに、あの子は選挙結果を悔しがる様子もない」
「みんなが、Aのように考えられるわけじゃないよ」
「…………分かってる」
智恵理には沈黙の末に返す。Aは強要をしない。あくまでも辞退を勧めただけ。人は人、自分は自分。個性を大事にする。周りがお仕事に身が入らないときに叱責はするけれど、八つ当たりのようなことは見たことがない。二度目のため息をついた。
開いた窓から風が入ってくる。加入してから伸ばしているというAの髪が、最初に靡く。顕になった右耳。前に見たときから、ピアスがひとつ増えている。
「あー……なんとなく開けちゃった。当時は、撮影のときに衣装との兼ね合いもあるからひた誤りっていうか」
「もしかして、この間頭下げてたのってそれ？」
「智恵理に見られていたとは……」
以前までなら。レッスンの帰りに寄り道して、ウインドウショッピングぐらい行けたけれど。最近のAはそれさえできない程に忙しい。「お仕事に呼んでいただけるのは嬉しいけど、ね」。休む時間が無いなんて贅沢な悩み、と言う。
77期で最年長は真琴。でも、考え方とかこころの成熟度は……Aがぶっちぎりで上なんだ。じゃあ、その次こそ真琴。残念だけど、わたし的には違う。Aの次は智恵理だと思う。
「真琴って、ケーキが好物だったよね」
「えっ？ うん」
「握手券付きのCDは1,600円。それだけあれば、ケーキはいくつ買えるんだろう。……織音は考えたことある？」
もし、お披露目の握手会に来たあの小さな女の子が。
お母さんのお手伝いを沢山して、お小遣いを貯めて。あの子の歳なら大金だ。あの子が、わたしのためにCDを買い、投票してくれたとしたら……。
「私が『順位を気にするな』と言っても綺麗事にしか聞こえないと思う。けれど……たしかにいるんだよ。研究生のために投票してくれる人が」
智「……他にもできること、あるよ。ぱるるさんに聞いたんだけど。今、先代の
らぶたんさんオススメの漫画も読める。みゃおさんオススメのアニメDVDもレンタルできる。ゲームセンターで遊べて、ぬいぐるみやお菓子なんかをゲットできる。
楽しいことがたくさんある。
「獲得票は、そういう一票の集まり」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
