481# 葵平咲和という人�� ページ31
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彼女のレッスンは想像以上だった。良いか悪いなら勿論いい。言葉はキツイけど言ってることは正しい……そして。指摘したところが直らなかったら、口を尖らせて「手本を見せる」と言う。ワンフレーズ。その部分の振り付け。時間にして数秒だ。
たったそれだけなのに。この場にいたキララの視線を全て奪ってしまう。キララはアイドルのオーラを感じて輝く生命体だ。葵平先生って何者？
……どっかで見た気もするけど、モヤがかかったみたいにハッキリはしない。頭を捻る私を見て、答えを教えてくれたのはたかみなさんだった。
「ウチらにとっては00の先輩にあたるんだよ」
「…………あっ！ 思い出した。5代目みぃちゃんと同期。たしか先代の」
「そう。8代目、」
顔と名前が一致すれば面影を感じさせてくれる。あの人は、葵平先生は……かつて【大島優子】を襲名していた。正真正銘、元アイドル。キララが彼女に寄り付くのも腑に落ちる。
それと同時に、卒業して随分経つのにまったく衰えないそのパフォーマンス。さすがはプロのダンサーだ。さらに磨きがかかっているらしい。
「咲和さんの卒業後にゆきりん達が入ってきたから……今の優子と面識は無いけれど。自分の前に襲名したメンバーは基本知識として知ってると思う。だから、ちょっとは気になるんじゃないかな」
「そうですよね」
10分間の休憩。きっとあっという間だ。水分補給したり、お花をつみに行ったりと。いないメンバーもいる。たかみなさんと話していたら葵平先生がこっちに来た。
牛山先生は、レッスンで実際に体を動かすことはない。けれど終われば汗を滲ませていた。熱気でじんわりと帯びるくらい。……なのに彼女は違った。全然、なにも。疲れた様子は無い。
「69期と会うのは卒業以来だよね。みんなの活躍、メディアを介して見てたよ。才加と由依にはさっき挨拶したけど、たかみなは？ 元気だった？」
「咲和さんお久しぶりです！ 突然コーチだなんてビックリしましたよ。元気です。周りの人達に支えられながら、やっと……ですけれど」
「相変わらずの謙遜だねえ」
葵平先生は最初の自己紹介のときのよう。口調も穏やか。それは、気心が知れたかつての仲間だからかもしれない。先生は自分より低身長であるたかみなさんの頭を撫でる。まるで親戚の子どもに会ったかのよう。
焦るたかみなさんをくすり笑う先生と、目線がかち合った。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
