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ともちんさんが席を立ち、トロフィーを受け取るまで。観客席からは悲しみの声が延々と続いた。そんなあ。どうして？ 嘘だろ。こんなの嫌だよ、有り得ない。何かの間違いだ。……と。
わたしや織音たちもそう。今までは速報にいなかったメンバーが選抜に入ったから驚いていた。けれど、今回はまったく逆の意味でびっくり。ショックを隠せない。みんなも76期の人たちも動揺していた。
『11代目、板野友美です。
私も……総選挙に参加するのは、初めてです。前回は、私の姉……10代目ともちんが参加していました。板野家の娘は……必ず、0048のオーディションを受けなくてはなりません』
ともちんさんは名前の後に礼をし、スピーチが始まる。……ともちんさんのおうちの話、友歌たちに前に聞いたっけ。たしか……お母さんもお婆さんも、かつては板野友美を襲名していたとか。
ここまで話したところで急に口を閉じる。ニコリと後ろの客席に向かって微笑んだように見えた。
『私も勉強として、皆さんと同じ客席で見ていました。そして姉は8位。今の私と同じ、速報よりも順位を落としての選抜でした。姉は……涙を堪えて、笑顔を見せていました。でも……！ 姉のファンの人は泣いていたんです。まるで、姉の分まで泣いているように。
私はっ、姉を初めて羨ましいと思いました。そして、私も00に入って……こんなふうに。皆さんに愛してもらいたいと』
いつのまにか……ともちんさんの目も濡れていた。
涙に混じって、気持ちが伝わってくる。隣を見たら友歌も、その向こうにいる織音も、わたしだって。もらい泣きをしていた。ズズ、と鼻をすする。
『こうして客席を見ていると、………っ。あの日の姉のときのように私のために泣いてくれている人たちが見えます。次は悔し涙じゃなく、皆さんの嬉しい涙を見たいから。
11代目板野友美はこれまで以上にもっと頑張ります！お姉ちゃんと同じ順位、光栄です。みんなっ、ありがとう！』
ともちんさんのファンが「ともちーん！」と思いっきり呼んでいた。ひとりじゃない、たくさんの人たち。
頑張れ、って。応援するように。何度も何度も。
織「いつもクールなともちんさんが……」
楚「泣いてるよ……！？」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
