ラピスラズリ⑩【0048】 (ページ19)

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今回の選抜総選挙を経て、送りたい言葉がある。

……と言っても、たかみなさんの言葉ではない。彼女が研究生だったときに今は卒業したメンバーに教えてもらったんだ、と。才加さんから「受け売りじゃん」とツッコミがとぶ。

そうなんだけど。たかみなさんにとっては大きな転機になった言葉らしい。それを通じて、メンバーに伝えたい。

『「嫌われる勇気を持って。嫌われない人は好かれもしないよ」。……私はこれに勇気をもらいました。今回の結果を受けて、もしかしたら決断する人がいるかもしれない。私は止めません。決断する勇気、続ける勇気。たくさんの勇気があります。

……でも私は、同期が襲名するのを見ながら続けることを選びました。そして、5代目高橋みなみを襲名した。みんなも、何か勇気を持ってください。えー、本日は本当に長い時間おつかれさまでしたー！』

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口々に「ありがとうございました！」と言いながら礼。この後は、選抜は選挙後のインタビューや取材に追われる予定になっている。他のメンバーは基本的に自由。

控え室に戻って着替えてもいいし、まだここにいてもいい。今日は全員バスで帰宅の手配になっているため、各々で時間を過ごす。智恵理は顔を洗いに人気のない場所を目指す。もう泣いてはいなかったが、顔には涙のあとがついたままだから。

「智恵理！」

その背中に声をかけたのは凪沙。選挙が終わって、二人は初めて顔を合わせる。「もう大丈夫？」と続けて気遣いをすれば、智恵理はありがとうを口にした。

顔色も正常で、足取りもしっかりしている。声もハキハキしていた。落ち着いていることに安心した凪沙は胸を撫で下ろす。そして……選抜入りおめでとう、と改めてお祝いする。まだ言えてなかったからと。

智恵理が嬉しそうに弧を描いてから、切り出す。どうして総選挙が嫌だったのか。凪沙はその理由がわかったらしい。沈黙して次の言葉を待った。言われたそれは、思っていたものと少し違う。

「怖かったんだ」

「えっ？」

「比べられて、競争させられて。自分が嫌な子になっちゃいそうで…………怖かった」

自分が上へ行くため、限られた席に座るために誰かを蹴落とす。凪沙には、それがたまらなく嫌で受け入れ難くて。けれどそんなことはなかった。

「競い合い、戦い合う先輩たちは……嫌な子どころか、かっこよかった。たかみなさんが言ってた勇気。それを既に持っているから選ばれたんだと思う」

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