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たかみなと優子は向かい合う。互いに笑みが滲んでいた。けれど、優子は色んな感情が混ざり合い、放流し、途端に涙を零してたかみなに抱きついた。たかみなの目にも涙がある。
フラッシュが途切れない。真剣に頂点を獲るために戦った二人の抱擁を、今この瞬間を。写真に収めていた。そこへ他のメンバーも集まってくる。総選挙直後にはこうして一箇所に揃って、たかみなが激励するのが恒例だった。
全員に声が届くように、スタッフがたかみなにメガホンを渡す。メンバーを一通り見渡してから、すうっと息を吸う。
『めっちゃ悔しがって！』
▽
開口一番。選抜だけで見れば速報から順位を上げたメンバーが多い。……けれど、悔しいと思っているメンバーはその何倍もいる。誰も何も言わない。たかみなさんが言ったことでやっと悔し涙を浮かべるメンバーもいた。
それは私だって。選ばれたことは嬉しいけれど、順位を落としてしまった。智恵理の速報順位で呼ばれた。私はどちらとも勝つことができなかった。嬉しさ100%ではない。3割は悔しいもある。
『たしかに、結果が全てじゃない。……けれど、あの場で感じたその気持ちが、人を育てます。………さて。まず、優子。改めて総選挙1位おめでとう！』
おめでとう、おめでとうございます。
私たちは口々に優子さんに声をかける。そう、自分がどうであれ嬉しい。たかみなさんと優子さん。どちらが2位でも悲しいし、どちらが1位でも嬉しい。二人以外、私たちメンバーはそうなんだ。仲間だから。
パチパチパチ。拍手が止んでから、たかみなさんはまた話し出す。
『五年ぶりの総選挙で、ファンの皆さんも大いに楽しんでくれたと思います。前回から襲名も殆ど入れ替わり、経験者は両手もいませんでした。誰が選ばれるか予想できないものになりました。
久しぶりにガチで戦って1位になったからには、優子！ 00に新しい風を吹かせてね。今回の総選挙でわかったと思う。後輩はウチらが思っていたより育っている。ウチと由依が00をまとめるのは変わらないけれど、メンバーを引っ張るのは1位になったあんたが最も相応しいと思う』
優子さんは大きく頷く。
勿論そのつもり、と自信に溢れた声で答えた。
『そして……恵、美森、A、智恵理。選抜枠が拡大されたとしても研究生が選抜することは滅多にありません。しかも4人、とても異例なことです』
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
