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「あの……私の腕が、才加さんより頼りにならないのは知っています。受け止めるような安心感がないのも分かっています。でも、それでも私は……こじはるさんを抱きしめてあげたいです。ダメ……ですか？」
「！ …………ううっ、」
10代目さやかのアンダーに選ばれたのは、10センチ以上も背の低いA。技術や経験などに合わせて、見た目も。足りないものが多いなんて彼女が一番よく知っている。
それでも、それでもだ。こじはるはAの気持ちを大切にした。二人はこれから一緒のステージに立つ仲間。ツバサに「ライブがしたい」とやり合ったことも知っている。同じ研究生にAが言いたいことを言ったのも、何も辛くない……そんなわけがない。きっと、どこかでは。
こじはるの背中にAの手が回る。才加は、ステージのときとは比べものにならないくらい泣き声をあげるこじはるの頭を優しく撫でた。……その三人を、少し離れたところで友歌と織音も見ていた。二人の目からも悲しみが落ちる。
一方、たかみなは。力なくへたり込み、目も虚ろで俯くともちんと手を繋いでいた。たかみなは壁に背中を預け、口を結んでいる。何も言わない。言わないで、笑顔でインタビューを受けるメンバー……速報圏外から初選抜のぱるるを見ていた。
優子の周りには、時間が経ってもカメラマンが常時数人いる。チャンスを狙ってシャッターを切られる。その近くには選抜入りしたメンバーがずらり。ゆきりんやまゆゆ、ゆいはん。美森も。
光の当たらない薄暗い通路から、視界がぼやけながらもそらさない。ずっと見ていた。中には壁に手をついてすすり泣いている者も。あきちゃに梅ちゃん、きたりえ。速報に名前が上がるも選抜には入れなかった者たちだ。
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「恵さん。選抜おめでとうございます」
「ありがとう。そっちこそ、速報と同じく10位以内おめでとう」
「ありがとうございます」
こじはる、そして才加と別れてから。Aは恵のもとへ。まゆゆがゆきりんを裁判のときのようにお姫様抱っこしているのを微笑ましそうに見る。それから……顔を合わせて笑いあった。仲の良い、友達みたいに。
嫌いだったAに、恵がこんなふうに笑うなんて。関わるようになった頃には想像できなかったと思う。
Aは携帯を取り出した。総選挙を経て、投稿用の写真撮影だ。しっかり順位が見えるようにトロフィーを抱え、2Sをパチリ。それを恵の携帯にも送る。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
