465# 雨を流す :♪この涙を君に捧ぐ ページ15
▼Nagisa
選抜メンバー。Aと智恵理と、そして……優子さん。みんなを見て分かった。さっき息が苦しくなったのも、声もあまり聞こえなくなったのも……。わたしは、焦っていたんだ。
嫌だ、って。目を背けて、本当の意味を知ろうとしなかった。人に言われ、感じたことをそのまま受け取って。それが誤解だって今頃気づいた。争うのは苦手。だから知らなかった。この感情が、これが……悔しいってことなんだ。
わたしは、
「わたしは、立つんだ」
次は絶対に。
..
総選挙後の舞台裏。一足先に退場したメンバーのところへ、選抜の証であるトロフィーを持ったメンバーも帰ってくる。メンバー全員の目が濡れていた。嬉しい、悔しい。おめでとう、でも自分の結果を思ったら心から笑うことは出来ない。そんな感じ。
美森は彼方の胸に飛び込んだ。彼方は、そんな彼女の頭を少し雑に撫でる。髪型が乱れても本人はお構い無しだ。楚方は万歳して喜び、鈴子と真琴も祝福する。
恵と佐江は互いを称える。泣きながら強く抱き締めあう。まさか二人で選ばれるなんて。嬉しい、一緒にステージに立てる。葉月たち他の76期も二人を囲んで嬉し涙を流した。
Aは……というと。同期よりも先に、話したい人がいた。ステージを後にしてようやくその人のところへ行ける。総選挙で選ばれたから、やっと言える。
「才加さん。3位で選抜入り、本当におめでとうございます！」
「うん……ありがとう！ Aもおめでとう」
「はい、ありがとうございます」
おめでとうは、速報ではなく選抜したときに言われたいセリフ。Aは才加がいるところで以前そんなことを言っていた。ちゃんと覚えている、というように真っ先に才加のところへ向かったのだ。
そこにやってきたのは……こじはる。また涙があふれてしまいそう。それでも、最初に言ったのは悔しいではなく。
「るーりん、おめでとう。本当に、本当に嬉しい。るーりんが頑張ってるの……にゃん知ってるから。一緒にお仕事するときも、前々から……準備したりとか。色んな、努力してるの…………っ、」
「こじはるさん……！ ありがとうございます」
本心だろう。でも、こじはるはついに悔し涙を抑えられない。言葉は途中で途切れ、今は嗚咽しか聞こえない。そんな彼女に、Aは腕をバッと広げた。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年7月13日 21時
