133# 曇る顔 ページ33
▽
手を止めた私の背後で智恵理の声がした。でも視線はそのまま逸らさずに。目の前の彼女へ、距離を縮めた。
「おつかれさまでした」
「…………………おつかれ、ボクに何か用？」
75期の二人でさえ、滝のように汗を流しているというのに。恵さんは今までも衣装を着崩していなかった。
着替えないのではなく、(私たちがいるから)着替えられないのか。その僅かな考えが浮かばないほど私は鈍感ではない。ほら、今だって。美森さんがいたから長い沈黙の末に挨拶を返してくれたのかもしれない。
「一緒に行きませんか、お迎え」
「行かない」
「ゆきりんさんも、劇場公演をやりきった恵さんに会いたいと思いますよ」
そこまで言うと恵さんの視線が外れた。彼女は口を閉ざし、佐江さんが持ってきたタオルでやっと汗を拭う。
まるで私の顔を、声を。視界から追い出したいような横顔。……うーん、そう上手くはいかないか。智恵理と美森さんも準備が整ったみたいだ。仕方ない。
でも、三人でその場を後にしようとしたとき。恵さんが他の二人には聞こえないような声量で言った。
「ボク、キミのこと嫌い」
流れ星のように短く放たれた言葉を背で受けながら、勢いのまま体が通路へ出てしまう。鉄の扉を閉めればもう彼女の姿は見えない。
先の二人が数メートル歩いたところで振り返る。そのとき私はまだ動けずにいた。おかしい。どこかで気づいていただろう。
「A？」
「ぁ……ごめん、なんでもない」
「そう……？ ではみんなを追いかけましょうか」
美森さんが首を傾げた。心配させないように弧を描く。
マイナスの感情を真正面から向けられたの、久しぶり。思わず動揺が溢れちゃった。人に嫌われる……なんて慣れているはずなのに。ここでの生活が星を出る前と違いすぎるせいだ。
▼Mimori
Aを見るメグ。メグを気にするA。二人の様子に気づいていないと言ったら嘘になる。どうして、までは分かりません。
おそらく彼方は気づいていないでしょう。彼方は研究生全員をまとめる役。分かりやすく顔に出るならまだしも、本人たちが公私混同をするタイプではないから。智恵理たち同期もAのことを………多分。
でも、
「なんでもない」
それは本当に『何も無い』顔？ 智恵理が名を呼ぶ直前まで度肝を抜かれたように目を開いて。唇は引き結んで。
何かに怯えるみたい。Aのあんな表情、初めて見ましたわ。
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ひな(プロフ) - 東雲れーたさん» わー！覚えていてくださってありがとうございます！！とてもわかりやすくて見ているこっちまで胸が暑くなったり、ちょっとヒヤヒヤしたり...これからも頑張ってください！！ (2月4日 23時) (
レス) id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
東雲れーた(プロフ) - ひなさん» 確認しました。向こうにもコメントしてくれたひなさんでしたか！ 作品を跨いで気に入っていただきこちらも嬉しい気持ちでいっぱいです。場面が頭に浮かぶ、文字なのに音楽や息遣いが聞こえてくる……一応そんな文章を意識してます。今後も楽しんでもらえたら幸いです。 (2月2日 8時) (レス) id: 35709d1cf1 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - ここまで来ちゃいました！！ポケモンの作品まで書かれていたんですね....！大好きな作品だったのですぐにわかりました！文の読みやすい書き方などが大好きです😌 (2月2日 6時) (レス) id: 1ddf176c35 (このIDを非表示/違反報告)
東雲れーた(プロフ) - 暇っぽちゃんさん» お返事遅くなってすみません。そう言っていただけてこちらも嬉しいです。応援ありがとうございます、頑張ります！ (2022年10月15日 20時) (レス) id: 70caf03276 (このIDを非表示/違反報告)
暇っぽちゃん(プロフ) - 久しぶりに0048の新作品があってとても嬉しいです…！！更新頑張ってください！！ (2022年10月6日 18時) (レス) @page34 id: 31b607a5e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月17日 20時
