589# ボートに乗る二人は ページ39
▽
最高のステージ。その一言に尽きる。このステージに、00メンバー全員が立つなんて聞いたことがないよ。チーム00でも約半分だから、やっぱりちょっとキツかったけどね。すごく楽しい時間だった。麻里子さんだけじゃなく、私にとっても特別な公演だったよ。
曲が終わり、最後の決めポーズの間も。客席は大盛り上がり。彼女が「8代目篠田麻里子」として認められたのは声援を聞いたら誰だってわかるだろう。
麻里子さんはセリーを降りると、ステージの前の方に出る……かと思いきや、くるりと振り返って後方に。彼方さんの手を取って一緒に前に連れて行ってしまう。ファンからは驚きの声があがる。
「75期の二人？」
「なんだなんだ？」
『ちょ、ちょっと……美森！？』
麻里子さんは自分の耳に触る。その後には彼方さんの右耳にも。……インカムの電源、落としてない？ 周りには聞かせたくないんだろうか。ファンには口元が見えないように手で遮って話し出した。私たちメンバーにも、聞こえるか聞こえないか。少なくとも私には途切れ途切れ。
すると、彼方さんが「全然っ、びっくりした」。この襲名を驚いているのかどうかを訊いたのかな。まりこ様は手を前で組む。今度は小声じゃない。こっちも拾える声量に。
「うふっ！ 彼方……これが、襲名よ」
「？」
「襲名して、やっと分かったわぁ。ここからが、私たちの夢の始まりだって。だから……彼方、もっと欲張りになって！」
首を傾げる彼方さんの肩に、笑顔で手を置く麻里子さん。
そして言ったんだ。今度は彼方さんの背中を押す一言を。
「遠慮してちゃあ、いつまで立っても襲名できないわよ」
「……！」
「あなたには、あなた
「わたし……だけの、」
もしかして知ってた？ 彼方さんが憧れているのはたかみなさんだけじゃない。【高橋みなみ】という名前そのものにもだってこと。以前の凪沙のように、憧れのメンバーの名前を実は襲名したい。けれど……のパターンだったこと。
だから「遠慮」。襲名したい、が。本命を叫べば、織音のように言われる可能性も0じゃない。彼方さんって結構繊細だからなぁ。それに普通、推しの卒業なんて誰が進んで望む？ そんなファン、見つからない。
でも、楚方と本当に仲良しだよね。まさかそこまで似るなんて。彼方さんの肩から手を離した麻里子さんは、再度、自分の左耳のインカムのスイッチを入れた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 38人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
東雲れーた(プロフ) - オノマトペさん» 嬉しいご意見ありがとうございます。内容重視で準備したいと思うのでお待ちいただけたら幸いです。コンビ推しの声もありがとうございます。先輩後輩なのに遠慮せず話せる・ライバルだが仲も良い。二人の関係性は私も気に入っているので、今後ともよろしくお願いします。 (9月17日 16時) (
レス) id: 70caf03276 (このIDを非表示/違反報告)
オノマトペ(プロフ) - こ、これは…！超需要ありありだと思います！個人的には日替わりが一番楽しみですね、本編もるりめぐのところテンション上がりまくりで読んでいます。これからも更新頑張ってください！ (9月17日 13時) (レス) @page45 id: 1db5f71093 (このIDを非表示/違反報告)
東雲れーた(プロフ) - ハルカさん» そう言っていただけてとても嬉しいです。日替わりですか、了解です！ 作成時期は今の段階では未定ですが、公開したときはこの作品の中でお知らせするので気長に待っていただけたら幸いです。 (9月16日 17時) (レス) id: 70caf03276 (このIDを非表示/違反報告)
東雲れーた(プロフ) - たるそらさん» そうですか？ 私のひらめき次第になりますが、三択とも検討してみますね。公開時はどこかで言うと思います。当時00になりたかったの激しく同意！ この夢小説を通して、たるそらさんの想いも少し叶えられていたら幸いです。こちらこそ今後もよろしくお願いします。 (9月16日 17時) (レス) id: 70caf03276 (このIDを非表示/違反報告)
ハルカ - 私も需要あると思います。個人的には日替わりがとっても気になります (9月15日 19時) (レス) id: f576803fcd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年8月25日 9時
