688# 神崎鈴子 改め ページ38
▼Suzuko
いったた。びっくりした……。まさかキノコが動くなんて思わなかったから、油断しました。ソナティに注意しておいて自分が引っかかるなんて……。
意識はハッキリしている。毒ではなさそうですね。ソナティにも「だいじょうぶ〜？」と心配させちゃいました。どこもなんともない。ええ、と答えたら「今日は襲名なんだから気をつけないと〜」なんて言われる。……襲名？
「襲名式のためにみんな集まってくれてるよ〜」
声の方には、キノコの着ぐるみをまとったソナティがマイクを持っている。……可愛い。「みんな」と言い、左手で指し示された方には『鈴子、襲名おめでとう！』という応援幕を持ったわたしのファンがいました。
これ、みんな……わたしのファンなんですね。こんなに多くのキノコさんたちがわたしの襲名を楽しみにしてくれているなんて、わたしは幸せ者です。
わたしの襲名。一生に一度の晴れ舞台の衣装は、少し黄味が入った白いドレス。段々となったフリルがスカート部分だけではなく、胸元や頭飾りにもあります。わたし神崎鈴子が襲名する、その名前は……
「7代目シロキクラゲ、襲名おめでと〜〜〜う！」
「わぁっ……！」
ソナティも、わたしの襲名を喜んでくれていました。ぴょんぴょん飛び跳ね、全身でお祝いを表現してくれている。7代目シロキクラゲの誕生が伝えられたら、客席からも「おめでとキノコ！」「やったねキノコ！」。
……嬉しい！ こんなに沢山のキノコさんたちが見守る中、わたしはついに襲名を果たしました。目尻が濡れる。感謝の気持ちでいっぱいです。歴代のシロキクラゲさんたちに恥じないように、これから7代目シロキクラゲを受け継いだことに責任をもって頑張っていこうと思います。
今日は、わたしの襲名を会場に見に来てくれてありがとう。本当にありがとうございます……
「ありがとう、ありがとうみんな。……ブベェッ！」
「リンダぁ〜〜〜！！ 起きてよ〜、ねぇ〜！ リンダぁ、死ぬぞ〜〜〜！？」
「……あれ？」
ソナティの声が、別のところから聞こえたような。……気づけばそこはキノコの森、フンギスター。劇場のステージではありません。わたしの格好も、ソナティたちと同じ研究生のまま。
ソナティと目が合えば、ソナティに抱きつかれる。縋るように「よかったぁ〜〜！」。わたし……変な夢を、ソナティが起こしてくれたんですね。ありがとう、でもなんか……。
「ほっぺが凄く痛い……」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年10月22日 13時
