757# その頃 ページ7
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フライングゲット号にて研究生がレッスンを開始。もう結構な時が経っていた。汗は頬を流れ、首筋を辿る。……それなのに。
場所は射手座星。西日が差しこむ時間帯にSPに包囲された智恵理たちは、安永によってゾディアック本社の一室に案内されていた。なのに外は、暗い。夜になっても……秋葉星を攻撃する強行を仕向け、センターノヴァを生み出そうとした巨悪の根源とは未だ会えていない。
連れられた部屋には真ん中に四角いテーブルと、二人分の椅子だけ。まるで取調室だ。手を伸ばせば後ろの壁に付くぐらい狭い。四方にはSPが一人ずつ待機、手の届く範囲にいる少女たちを四人がかりで監視していた。
椅子に腰を下ろしてから、どれくらいの時間が経ったのか。ずっと智恵理の表情は硬い。そんな彼女を、凪沙は心配そうに窺っていたら……ついに。扉が開く音がした。入ってきたのは安永だ。
「お父様からお話があるそうです」
彼の声は、初めて凪沙と顔を合わせたときと同じ温厚なもの。変わらないことが、彼女は逆に違和感に思ったかもしれない。
そんな安永の瞳はまっすぐ智恵理へ。手元の端末を操作すると、CEO室にいる父の姿が映った。デスクに両方のヒジをつき、右手は左に重ねている。
……おそらく父は、娘しか見ていない。凪沙はただの付き添いだ。追い出そうとはしないが眼中には無い。その証拠が、挨拶も飛ばした『やあ、智恵理』という開口だろう。
「どういうつもりですか……！？」
『それが久しぶりに話す、
秋葉星のこと、メンバーを生け捕りにしようとした本当の目的。それだけじゃない。裁判に総選挙、フンギーたちのこともそうだ。全てをひっくるめた上での「どういうこと」だった。だが、彼は不思議でならない。
射手座星の住民でありながら芸能に加担した反逆者。それでも娘で、たった一人の家族。助けてあげた。それなのに……何故そんな顔を？ 智恵理は実父に対し、眉間の皺を一層濃くして鋭く睨んでいる。
カメラが少し引いた。CEO室のモニターには、これまで智恵理が出たライブ(や裁判の)映像がところ狭しと映し出されている。どれも彼女がメインに切り取られていた。
『君の活躍は全て見ていた。正直、これほどの才能があるとは思わなかったよ。今では、次期エース候補なんて世間は言う程にね。……君は、輝きを手に入れた』
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月16日 19時
