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▼葵平咲和
正直、驚き。ツバサも、こいつが襲名していた篠田麻里子さんもクールビューティーのイメージを持ってる人は多いから。私だってそう。
大人で余裕があるメンバーで、こんなふうに情熱的なのは普段や昔のことを知る者からすれば意外。そんな一面があったのかってほどに。オリジナルは周りより歳上でもあり、自ら前に出る印象はあまり無い。
それでもイメージはイメージだ。ツバサは若い子たちだけじゃなく、私たちも思っていなかった行動に出た。大きく流れが早い川の中で必死に抗う彼女を止めるなんて、私には出来ない。
誰も口を出せるような雰囲気じゃない。踊りが続く。
「もっと強く！ 早く！ 指先まで意識してっ！」
伝説のセンターノヴァ。そいつが現れる前の総選挙で一位となり、暫定のセンター経験もしたツバサ……いや麻里子。もっとこうだと、こうするんだと。今の子たちに手本を見せて訴え続ける。
結果的に手を払われた牛山先生は徐々に冷静になってきたらしい。
「ツバサ、アンタ……」
柏「ツバサさん……！？」
「さあー……ほら！ やってごらんなさい！」
メンバーを他所に、裏方の私たちにはもう驚きは無かった。
強いて言うなら……気の毒？
「本当は、メンバーだけに任せていられない。自分も前に出たいんでしょうね……」
「でもさ……今のツバサじゃ、さすがに」
「いくら本人にやる気があっても無理。魂は既に次の世代に移っているし、それに……。四年以上もブランクがあるのに輝くなんて、」
「あっ……！」
美果子が何かに気づく。ん？ どうした。視線の先を牛山先生と見やれば…………えっ！？ こんなことって。
その異変にはメンバーたちも次々と気づいて、同様に目を見開く。
友「嘘……！？」
牛「キララが……！」
船の中のキララが集まってきたかと思えば、ツバサの周りで輝いた……。本人には悪いけど、そんなことありえないって思っていたのに。求めるレベルには遠く及ばない弱い光。だが光ること自体が奇跡なのに。
中でも信じられないのは、引き寄せられたキララの中に篠田のキララがいるってこと。【篠田麻里子】の魂に反応したの？ ツバサは望んでアイドルと決別したはずだ。それなのに。
これには彼女も驚いていた。踊っているの自分だけなのに、キララが輝いたんだから。これは自らが輝かせたのかと。思わず集中が途切れてしまう。足がもつれ、バランスを崩してへたりこんでしまった。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月16日 19時
