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男は、あたしの身分証明までリーダーに返す。そしてから……あたしの目の前まで歩いてきた。え、何。怖いんだけど。目をぱちくりさせていると手を差し出される。
何この手。握手か？ だったらなんであたしに？ ここはリーダーでしょ。行動の意味が全然分からない。握っていいのかすらも。出したり引っ込めたりを繰り返してると相手が痺れを切らす。舌打ちされた。
「はぁ……。お前、橘まどかだろ。この時点で気づいてねえの？」
「えっ、な、何がですか……？」
「……なんだ、分かってて身分証明出してきたのかと思ったのに。マジで気づいてなかったんだ。じゃあ改めて自己紹介するか」
オレの。貴方の名前は…………亜窟杜也。ネットでは本名の頭文字をとって『亜杜』で通している。そう言われた。…………は？
え待って、頭ショートする。亜杜って、あの亜杜くん！？
「WOTAなのは知ってたけど……」
「あ？ 言ってなかったっけ」
「冗談かと思ってた」
「おい」
デコピンされた。痛い。額を押さえるあたしに、ここではHNで呼ぶなと言ってくる。……あ、そうだよね。じゃあなんて呼べばいい？ 苗字でも名前でも、どっちでもいいと返ってきた。じゃあ杜也くんで。
怖がって損しちゃったよ。杜也くんならかしこまらなくていいや。いつものタメ口で話しかける。
ネ友とこんなところで会うなんて思わない。護たちのこと、置いてけぼりにしていたわ。特にリーダーの顔には『そんな口の利き方していいのか！？』と書いている。多分あたしだけはいいと思います。
「あたしと紅音の友達です。……ま、顔を合わせたのは初めてだし、トップオタっていうのも今知ったんですけど」
「……そういや紅音は？」
「弟は運に恵まれなくて来てない」
あたしと杜也くんが知り合ってからは結構長い。片手じゃ足りないし。彼は「藍花星って聞き覚えあったんだよなぁ」。そして、気合を入れるように……よし。
指示が欲しいときは自分のところに来い、と言われる。付け足して「オレは年功序列が嫌いだ。歳上だろうが末端に敬語を使う気は無い。その代わり、ガキのタメ口にも特に言わない」。そうは言うけど。
「じゃあアレもマジなんだ」
「ん？」
「杜也くん、00のLASやWOTAスーツ用への改造にも携わるって前に言ってたじゃん。WOTAの人型戦闘用兵器が発展したのは自分がいたからって」
「オレが言うのもなんだけど本当」
明らかにリーダーたちの目の色が変わった。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月16日 19時
