765# 止まれない ページ15
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凪沙が知った射手座星でのこと、智恵理のこと。ツバサさんは私たちのボスだ。だから知っていたかもしれないが……智恵理には、そのときが来るまでは父親が唯一の家族だったらしい。
お兄さんがいたなんて初めて知った。その人と母親が、既に亡くなっていることも。
そっか、私たちにとってゾディアック社は警戒すべき組織。けれど智恵理はどこか本気で憎めない。それは親だからなんだと思っていたがそれだけじゃない。たった一人の家族だったから……。
「智恵理のあの様子では、秋葉星奪還作戦に支障が出てしまう……」
「「…………」」
「なんとしてでも立ち直ってもらわないと！」
「っ、そんな言い方しないでください！」
「彼方……！？」
ツバサさん、焦ってる。そのせいで……聞く人が聞けば冷たいように感じてしまう物言いだった。それは彼女の心に引っかかってしまう。たとえ、表で口にできないようなことをしていたとしても。彼方さんだから今の智恵理を痛いほど理解できるんだ。
でも……ここにいる誰も、ツバサさんだって。できるなら智恵理の気持ちを蔑ろにしたくないって思ってますって。
「目の前で父親が殺されるなんて……それが、どれほどの痛みか」
「お姉……」
「わたしたちだって。まだ、父の死から立ち直れていないのに……」
そんな場面に出くわすなんてひと握り……いや、一摘みかも。トラウマになってもおかしくない。
正直、私たちが思ってる以上に智恵理は傷ついている。他の何も考えられない状態だろう。そんな彼女に、デュアリウムを反応させるパフォーマンスをしろなんて普通なら酷な話だ。
誰も何も言えず俯いた。空気は重いし暗い。周囲に当てられて、沈みたくないけど私も下を向いてしまいそうだ。…………。
「時間が無いのよ！！」
「「……！」」
通夜の空気を吹き飛ばすぐらいの声量。
この事件をどう処理しよう。そんなふうに考えていたかもしれないメンバーたちは一斉にハッとする。視線の先のツバサさんは、眉を釣り上げていた。
「我々が敗北し、芸能が失われれば……D.G.T.Oによる支配が徹底的になってしまう！ 私たち00が最後の希望の光なのよ……！？」
「「…………」」
下を向くなと言われた気がした。目を覚ませ、過去ではなく今を見ろって。
芸能、支配……最後の希望。このままでは前に示された可能性、00を旗印とした反政府運動への弾圧が更に激しくなる……？
「……そんなの駄目」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2024年3月16日 19時
