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▼Nagisa
『失礼かと思ったんですけど……スカートに値札が付いていたので』
勘違い。早とちりのオンパレードだった。男性は、智恵理が先程購入した服に値札が付いたままだったのが気になったらしい。
指摘するのも、もし言葉を間違えたらこんな都会の真ん中で恥をかかせてしまうかもしれない。それでも迷った末に智恵理のことを考えて、教えてくれたというのにわたしってばあんな………。申し訳ない。穴があったら入りたい。
「すみませんでした……」
「ありがとうございます……」
深々と頭を下げて謝った。心配と羞恥が入り交じって、なんだか気まずい。鮮やかな空の色を映す川を眺めながら、柵に寄りかかって智恵理についに話しかけた。
困ってることや悩みがあったら言ってほしい。智恵理は、なんの前触れもなくわたしが言うものだから、いきなりどうしたという感じだ。
「もっと、智恵理に心開いてほしいなって……」
智恵理は何も言わない。わたしの方を横目で見ているだけ。うーん、どうしたらいいんだろう。………足音？
段々こっちに近づいてくる。相手は走ってる？ まさか今度は本当に危ない人じゃあ……
「はっ……智恵理！」
「「きゃっ」」
相手の顔がよく見えないうちに智恵理の肩を叩いた直後、目が眩むようなフラッシュが視界を覆った。反射的に目を瞑る。
開けるより先に聞き覚えしかない元気な声が。
「ナイスショーット！ ふふっ」
「「ゆ、優子さん！？」」
目の前にはカメラ片手にVサインを突き出す優子さん。
突然のことに驚くわたしたち。それとは裏腹に、秋葉星の空は相変わらず綺麗な青と雲の白のコントラストがどこまでも色づいていた。
..
77期研究生が、各々襲名メンバーと時を過ごしている頃。入浴を終えた鈴子と楚方は寮のリビングにいた。
複数人が腰を下ろせるソファにひとり一つずつ。鈴子は棚に整頓されていた00のCDをとりあえずいくつか持ってきて、一枚一枚中を確認していた。
楚方には、鈴子が何をしているのか検討もつかない。黙々と作業をしているものだから退屈で、思わずくわぁ…と大きな欠伸が零れる。
「これにもやっぱり、」
「うん？」
「00の歌詞や出版物には、全て同じ名前が
鈴子の手の中には、CDと一緒に封されている歌詞帳。その、とある頁を見開いて楚方へ向ける。
注目はココ。S.クワドラプルという単語。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
