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「けれど、芸能がこれだけ求められている今。そうも言っていられなくなりました」
「私たちが、アンダーに？」
「襲名メンバーのポジションでライブを……？」
ツバサさんの物言いに、部屋の端にいた智恵理が驚いた顔をする。本棚の前に位置取る凪沙も微かに背筋が伸びた。
早速、アンダーに入るメンバーを発表する。説明は以上というように直接の言葉を放つツバサさんを注目。ピリッと空気が引き締まる。彼女は手元のタブレットに視線を落としながら酸素を吸い込んだ。
「たかみなのアンダーに、東雲彼方」
「……っはい！」
「こじはるのアンダーに、岸田美森」
「わたくしも…！？」
目の前の数人がけのソファ。二人の間に座る楚方は特に嬉しそうな顔だ。彼方さんのことを喜ぶのは当然として、美森さんの名前が呼ばれると思わず抱きついていた。
75期とはほぼ毎日一緒に行動する。だから自分のことのように私や皆も嬉しくなってしまう。
喜びもそこそこに。ツバサさんからの発表は続く。
「続いて、ゆきりんのアンダーに。
「っ、はいっ！！」
三人目は76期生から。呼ばれた瞬間、すっかり丸まっていた背筋を縦にピンと伸ばす。耳の下でツインカールに結んでいる人。橙色のリボン………あれ？
彼女、さっき私と目が合った人だ。
「そして才加のアンダーには、瑠璃川A」
「えっ！？ あ……はい」
「最後に優子のアンダー。…………園智恵理」
「あっ………！ はい！！」
ステージに立てる。そうは言われても、数ヶ月前に入ったばかりの77期は『かもしれない』という域。更に76期が7人もいては望みは薄い。誰もが思っていた。
だから、急にツバサさんが私の名を呼んだときは完全に油断していて。素で驚いてしまった。しかもその後にすぐ智恵理も呼ばれたから。予想外が起こりすぎだ。
周りの視線を浴びながら智恵理に手のひらを向ける。意味がわかったらしく、私たちはおめでとうを込めて軽くタッチした。
「すっご……」
「わぁ〜、チャンスの順番めっちゃ早いじゃん！」
「よかったね、二人とも！」
友歌が羨望の目でこちらを見ている。ソファに体重を預けていた真琴や隣の鈴子、織音が駆け寄ってきた。その背後からも彼方さんたちが賞賛するように笑っている。
しかし。ありがとう、と私と智恵理が言った直後。
「どうしてですか！？」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
