097# 推し≠襲名／�� ページ47
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元通りレッスンの日々。空き時間が襲名の劇場公演と被るときは現地に向かい、スタッフさんと立ち見をしたり。そういうときは公演後に楽屋に挨拶にも行くようにしてる。
たまに鈴子からオリジナルメンバーの話を聞いたり。気になることは更に調べることもある。気持ちを込めて歌うため、歌詞を理解する作業に似ているから楽しいんだよね。
「Aさん、おはようございます」
「おはよう鈴子」
今朝もシャワーを浴びてから部屋に戻る。いつもよりは早めに切り上げた。遅刻するような時間ではないけれど、雨が降ってきたのだ。
サーサーって感じだからすぐ止むだろう。しかし、才加さんに「風邪をひいたら動けなくなって逆に体訛る」と言われたら、引き上げざるを得ない。
「うっ、うぅ〜う……！」
鈴子が眠るベッドの上段、凪沙が起きたようだ。伸びをして出てしまう声に、私と鈴子の視線が向いた。そして、ぬぼーっという効果音が似合う顔をする。
まだこっちには気づいていないらしい。凪沙は自分の左側にある白い壁、もとい9代目大島優子で飾られた壁を見やる。ポスターやグラビア、雑誌の切り抜きも。ステージ衣装だけではない。それらをマスキングテープや可愛いシールでデコって貼っていた。
カシャッ
「ん？」
「すっかり……優子さん推し、ですね」
鈴子は腕を伸ばしてその様子を携帯で撮影。
シャッターを切る音に凪沙がこちらを振り向いた。
「えへへ。鈴子の推しメンは？」
「わたしは……ソナティです」
まさかの身内。凪沙は、てっきり襲名の誰かの名前が出るのかと思っていたんだろう。まあ、それも否定できないけど。AKB命の鈴子。私の予想では箱推しだと思う。
"Sonata"と、何故か書きなれたサインがある空き缶を片手に掲げる。大事にしてるとは思っていたけど、そういう理由だったのか。彼女は青田買いだと言う。
「Aはみぃちゃんだったよね」
「うん」
「現在、みぃちゃんを襲名するメンバーはいません。Aさんはやはり、6代目峯岸みなみの襲名を目指しているんですか？」
「ううん、全然」
「えっ！？ 違うの？」
鈴子がそう思うのも分かる。織音が8代目さしこになりたいとお気持ち表明をした例もあるし。アイドル好きのゆきりんさんも、いちばんの推しは柏木由紀さんらしいから。
でも、私はちょっと違うのだ。推しはあくまで推しで、その名前が自分とイコールになるのは望んでいない。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
