081# 藍田織音の心の内 ページ31
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その日の夜。ルームメイトが寝静まっても織音はなかなか眠れないでいた。ベッドから抜け出して外のベランダに立ち尽くし、浮かない顔で秋葉星の夜空を見上げる。
ふと、人影を感じてその方を振り返る。背後には凪沙が。同じ階の同じ方角に面した部屋は、ベランダを通じて繋がっている。隣の部屋に行くにも容易い造りになっていた。
凪沙は何も言わない。ただ、同じように空を眺めている。その横顔は織音にとってとても心強いものだった。
「わたし、親がいないでしょ」
唐突に口にしたのは織音自身の現実。勿論、凪沙は幼馴染だからそのことは知っているのだが。静かに織音から紡がれることに耳を澄ませた。
織音の両親は幼い頃に他界している。父親は事故、母親は病気でこの世を去った。
「でも、凪沙と友歌。大切な友達がいてくれたし、工場のおばさん達も良くしてくれた」
だから寂しくなかった。織音にとってこれは本当だ。
それでも、どこかで思っていた。
「誰も、わたしを見てくれないって」
「そんな……」
織音がこぼした本音に、凪沙は思わず彼女を見やる。しかしその目は合わないままだ。織音は続ける。
「誰かに見てほしかった。でも……誰かに見られるって、こんなに怖いことなんだね」
「………！」
彼女にとって、それは初めての経験だった。親がいないハンデがあっても凪沙と友歌がいてくれたから心細くなかった。優しい人たちに恵まれたから不安もなかった。
ある意味で、織音は守られていたんだろう。だからこんな風に、真正面からぶつけられる負の言葉には耐性がなくここまで来た。
00のファンは、00に入った
彼が、わたしを良く思わないのも当たり前。不愉快だと貶されたように00をやめれば、これ以上害することはない。でも………
「大丈夫だよ。わたし、握手会に出るから。たかみなさんも、誰だってアンチはいるって言ってたし。00になるって、そういうことだもんね」
「………織音」
00を反対するのはDESだけだと思っていた。しかし、それは違うのだと織音は身を持って実感した。今回だけじゃない。沢山の視線を浴びる襲名だって同じ。ううん、自分以上に傷ついた人もいるかもしれない。
織音は凪沙を見て、力なく笑みを浮かべた。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
