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▽
『
織音への不満は止まらない。停止しようと友歌が操作しても全然反応しない。多分、そういうプログラミングを施しているんだろう。
つらつら述べてあと数十秒。彼の、もう片方の手にはハサミが握られている。その刃はおどしともとれる言葉の綴りに伴い、織音の首にかかっていく……。
『それは、私の愛する00に穢れた歴史を刻まれることだ。次の握手会までに00をやめろ。でないと握手会会場を爆破し、お前の00人生を』
「何を勝手に見ているの！！」
「ツバサさん！」
映像に釘付けでツバサさんが来たことに気づかなかった。ツバサさんは友歌の手から無理やり携帯を奪い取り、力づくで停止。プツリと映像が途絶える。
まるで私たちを咎めるような声色だ。でも、これで良かったかもしれない。
「ファンからの手紙は、こちらで調べたものしか受け取ってはダメ。まだ来るはずないと思っていたから、チェックが甘かったわ」
中心にいた織音は言葉にならない感嘆をもらす。呼吸も上手くできないかのように切れ切れで、すっかり怯えてしまっていた。
ツバサさんが織音を見やる。私も視線を追った。凪沙が心配そうに織音の名を呼ぶ。
「気にすることは無いわ。こういう手紙はよく来るのよ」
「でもっ」
「先代のさしこは、二年前に卒業したばかり。とても人気があったわ。人気があり、目立つメンバーには……その分アンチが付きやすい。そして、その座に憧れるメンバーにも」
「……ぁ。アン、チ………」
これぐらいで挫けていたらこの先もやっていけない。ツバサさんが言うことは理解できる。私たちはただの研究生。襲名を目指すなら、目にする人たちはこれからもっともっと増えるだろう。
でも、犯行予告が。何も言えない織音の代わりに友歌がツバサさんに言う。
「DES軍と戦うAKB0048が、犯行予告ぐらいで怯んではいられません。毅然とした態度で望みなさい？ 一人のアンチのために、大勢のファンを悲しませる。そんなことは許しません」
「っ……！」
話は終わり。時間よ、レッスン場に移動しなさい。
とりあえず乾いた返事をしておいた。しかし、織音は簡単には切り替えられないようで……。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
