069 ページ19
▼TAKAMINA
想像できなかった。けれど、同時に安心した。いきなりでビックリしたがAが泣くことができて本当に良かった。
キララに認められたから。襲名を目指すAにとってはこの上ない幸せだろう。ボロボロと涙をこぼす彼女にキララは驚いているようで、心配そうにAの顔の周りを飛び回っていた。
「…………たかみなさん」
「んー？」
「私、自分はアイドルって柄じゃなくて。らしくないって分かってて」
「うん」
涙混じりに、Aはゆっくり話してくれた。ウチと分かれて少ししてから、またある人から着信があったらしい。それは実の妹。
どんな子か少し話は聞いている。A曰く、口が達者で要領がいい。自分と異なる考えは中々理解できない短所があるらしい。
端的に言うと、思い通りにならないと不機嫌になる母似。会ったこともない子を悪くは思いたくないんだけど……。
「電話の最後に言われたんです。お姉ちゃんにアイドルは向いてない。地味で、体育の成績も微妙。身の程知らずだって」
「Aはどう思ったの？」
「らしくないと言われたら肯定します。でも、このことには正直……私の何を知ってるんだって思いました」
どんな思いで家を出たか知らないくせに。努力する姿を見てないくせに。動けない？ 私が苦手なのはチームプレイの球技とかで、走ることを始めとした個人競技はそれなりにできてたし。
……と、こんな感じでぶちまけるのが止まらない。
もう涙は引っ込んだね。目元が腫れてもいなければ、暗い表情も吹き飛んだ。キララはAの変わりようにびびっているようだけど、彼女を見つめる目だけはそらさない。
「………あ、すいません」
「いいって。Aが落ち込むなんて中々見ないからね。あんたもみんなに心配かけたくないでしょ」
「ですね」
「元気になったみたいでウチもよかったよ。これで明日からまたレッスン頑張れるね」
結果的に愚痴を吐いてしまったことをAは気にしていた。全然いいのに。頼っていいと言ったのはこっちなんだから。
変なところで気遣いが利く子だ。ウチの私服をダサいと言ったり、才加のトレーニングへの誘いを平然と断ったり。普段は真顔ではっきり言うくせに。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 31人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
