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疲れたな。それと、羨ましい。彼方さんと楚方は仲良しで羨ましい。互いを大切にできるなんて妬けてしまう。私には無縁だから。
すっかり自分の世界に入っていた。注意が散漫していた。だから気づかなかったんだ。
「……えっ、A！？ またそんな危ないところにいて」
「あ、たかみなさん」
「才加に言われる前に早く降りなって」
突然の声に我に返る。西の空もとっくに夜の色になっていた。うわ、随分長く考え込んでいたみたい。
ベランダに出たたかみなさん曰く、音楽が聞こえてきたらしい。ああ……流しっぱなしだったもんな。それで見上げて目を凝らしてみたら私だったと。
「どしたー？ なんかあったの」
「ノーコメントで」
「言いたくないなら無理には聞かないけどさあ。でも、その顔で部屋に帰るのはちょっと不味いかも」
「え？」
手鏡を渡された。どう見ても浮かない顔。目も死んだ魚のよう。
私、基本は顔に出ないんだけど……。こうなるのは結構まいってるサインだ。どうしよ、だる。
「よし！ じゃあウチが、Aが元気になれることを言ってあげよう」
「そのテンション、逆に怖いです」
「ソレ、気づいてる？」
そう言って、たかみなさんは全然違う方を指差した。目で追うとそこにいたのは………正直見間違いかと思って目をぱちくり。
その子は視線が合うと、スススと恥ずかしがるように私の視界からすぐに外れて。死角に消えてしまう。
「キララ？ ……でも智恵理のとは違う」
「やっぱり気づいてなかったか。……あのとき船で候補生のあんたたちを助けた日、そのキララはAの輝きに惹かれたんだ。それ以来Aに着いて回ってる」
たかみなさんが言うに。この片翼の形を成す鮮やかな青色のキララは、おそらくずっと私のそばにいた。キララに意志があるかなんて聞いたことは無い。
けれど、私と会う日。たかみなさんはそのキララの姿をいつも目にしていたと語る。え、そんな前から知ってたの？
「けどみんなからそんなこと言われたことは……」
「見てた感じ、すごく恥ずかしがり屋じゃん。キララ自身あんたを見るのはいいけど見られるのは苦手なのかも」
だから、隠れていた？
キララについては分かっていないことの方が多い。そういうキララがいても不思議じゃないだろう。
「すごいじゃん。まだお披露目前なのに、キララに選ばれるなんて」
信じられない。でも嬉しくて。
感極まって、視界がぼやけた。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
