090# 好きだから :♪アンチ ページ40
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Aが楚方と合流する少し前。織音と鈴子は美森と共に、避難するファンに言葉をかけながら誘導を手伝っていた。その中にはあの少年の姿も。人波にもまれて転んでしまったのを見て、織音は躊躇なく「大丈夫ですか！？」と駆け寄った。
怪我はないか。そう呼びかけて手を貸そうとするも、彼は触るなと乱暴に払う。
「俺は、騙されないぞ！ そんな良い奴ぶったって、お前がさしこだなんて………絶対に認めない！！」
「ひ……っ」
「さしこは、俺の全てだった…。さしこの名を他の奴に穢されるなんて……っ、絶対に許せないんだ！！」
▼Orine
彼は泣いていた。頬から沢山涙が流れている。そこでやっと気づく。この人は、ただわたしが気に入らないからあんな強い言葉を言ったんじゃない。
そうだ……あのとき見た部屋は、さしこのものでいっぱいだった。さしこのポスター、グラビア、応援日記。この人は、さしこが好きなんだ。いっぱいいっぱい好きなんだ。わたしがさしこさん推しなように、この人もさしこさんが推しなんだ。
『敵機落下、注意して！』
この人を護らなければ。肩を掴んで、自分は片足の膝を立てる。背中を向ける形で爆風から庇った。
わたしの下敷きになった彼に怪我はないかともう一度尋ねる。彼は驚いて答えられないようだ。わたしは、この人に言いたいことがある。
「護らせてください！ お願い！」
「えっ、え……」
「あなたは、わたしにとって初めての"
わたしも、さしこさんが好き。大好きだから。
「わたしに何が足りないのか教えてください！ 大好きなさしこさんになるには、何が必要なのか！」
「………っ、あっ！」
彼の視線が、わたしの目から下へ逸れる。振り返ったところには落下してきたというDESの無人機。まだ行動できるようだ。
今は避難しなければ。立ち上がって彼へ手を伸ばした。早く、と言ってやっとわたしの手を取ってくれた。走り出したら銃撃が始まる。あと少し遅かったら大変なことになっていただろう。
柵で道が塞がれている。わたしはあの人を庇うように前に立った。銃口を向けられるとさすがに恐怖で怯みそうになる。わたしだって死にたくない。でも、それはみんな同じだ。
「うおおおおぉっ、よっしゃ行くぞおおお！！」
そのとき、雄叫びが太く響き渡った。戦闘の全てが止まるくらいの迫力。
目で追った先には幾つものサイリウムの光がある。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年7月1日 14時
