708# 想いよ伝われ ページ8
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彼方さんとまりこ様のセリーは地上に近いところまで降下。凪沙に智恵理、友歌がストンと降り立つ。三人はバシャアッとずぶ濡れになった織音の名前を思わず呼んだ。
織音の想いは伝わらず。それどころかフンギーはまた興奮し始める。言葉が違うのだ、当たり前といえばそう。
だが織音は諦めない。体を起こし、向き合い。必死に訴え続ける。自分勝手に大切なものを壊される、その気持ちは秋葉星を追い出された自分たちにも分かる……と。
「この場所は、渡しちゃだめっ……！ あんな悲しいこと、もう嫌だから」
「フゥゥギィアア…………」
「大切な場所を失う辛さは……みんな同じはずだからっ」
「ギアアアアアアッッッ！！」
彼らは聞く耳を持ってくれない。一、二匹だけじゃない。方々に散っていた大人のフンギーたちが集まってきた。全身の毛を逆立てて怒っている。また自分たちの仲間や住処を奪いに来たのかと乱心だ。
酷いことをする人間と私たちを同じ目で見ているのならば。失ったモノが『ごめん』で戻ってくるか。いきなり土足でやってきたかと思えば、何もしていないのに攻撃されて怪我を負わされ、住処も荒らされて家族の命まで……。
そっちがその気なら、とか。いつ人間に仕返しをする事態になってもおかしくないところまで来ていた。
「わたしもこの場所を守るために戦わせて、……っ！」
「ウグアアアアア！！」
「織音！」
ゾディアックは相当彼らを脅かして来たらしい。その腹いせがこれだ。もう聞きたくない、戯言、今更話し合い。涙を浮かべて泣き落としでもするつもり、騙されるな。耳障りだというようにまたも大きな腕で湖をかいて水を浴びせた。今度はさっきよりも大量に。
織音は尻もち。これ以上は本当に危険である。まりこ様がセリーから降り、織音に駆け寄った。自分が濡れるのも構わないのは友歌もだ。フンギーとの間に割って入ると二人を庇うように手を広げた。
「やめて！ 私たちは奴らとは違う！ あんたたちと仲良くしたいの！」
「ヴヴヴァァァ……！！」
凪沙も加わり、説得を続ける……が。平行線である。どうして伝わらない、分かってくれないの。中々思い通りにならず友歌が半ば叫ぶ。そのとき、あの人とばちっと視線が絡んだ。何か思いついたみたいにニッと笑う。…………？
首を傾げていれば、彼女……才加さんは歌い始めた。それは『ウッホウッホホ』の冒頭。才加さんの、代表的なセンター曲のひとつである。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
