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別に楚方に限ったことではない。来てる奴には来てるって。それとなーくツバサさんに訊いたら、名前までは教えてくれなかったけどそう言われた。
藍花星と熱海星での公演。襲メンを差し置いて新曲を歌った私たち。それも三曲だ。一部ファンから反感を買うのは当然と言えば当然。まだ襲名もしてない足りないところだらけの研究生になんでって。
「他と同じ程度なら特に気にしないんだけど……」
「ツバサさんが言うに、楚方は研究生にしては少し異常なんだ。最初は……Aのアンチレターの中に紛れ込んでいて、その流れでわたしにも知らされた感じ」
「ま、原因はわかりきってるけどね」
「えっ？」
キョトンとする織音。……あ、そういえば織音も受け取る方だったね。例の一件以降、他にも自分を【指原莉乃】に向いていないと思うファンの方が居るんじゃないかと。夢を叶えるため、否定的な意見も聞く姿勢である。
……で、楚方へアンチレターが大量に届く理由だ。私は最初気づかずに中身見ちゃったから、ほぼ事故みたいな感じで知っちゃったの。すまん。
あのね、お披露目PVで【多田愛佳】になりたいって言ってたじゃん？ でも現時点で12代目らぶたんさんが在位している。もし楚方に、らぶたんの資質が身についたときは…………。ここから先は言わずとも分かるだろう。
「らぶたんファンからしたら溜まったものじゃない。それに、らぶたんさんは元74期だし。選抜総選挙も復活した今、まだまだ卒業には早すぎるっしょ」
「つまり、らぶたんさん推しの人たちから……！？」
「楚方の場合は年齢制限以下で合格したこともある。どんな子か期待した割に、目立つのは凪沙や智恵理ばかり。なんで合格できたのか分からずに困惑した00ファンも多いんじゃないかな」
あの、鈴子が怖い顔で見てくる……。私を睨んだってアンチレターが来た事実が無くなるわけじゃないよ。ていうか、楚方は？ いつもは何かしら声を上げるのに静かすぎない？
チラリ彼女を見てみれば……防寒用の毛布を鼻まですっぽり覆っていた。隠れていない目元は濡れては無いが、明らかに元気がない。……そりゃあねぇ。アンチレター届いて「やったー！」なんて思う奴いない。でもまあこういうこと。
輝くためには、楽しいことばかりじゃない。今までだってそうだった。……ここにいる者は智恵理が卒業するか悩んでいたことを知らない。だから智恵理は、総選挙で輝いていたんだ。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
