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面倒くさい。喉元まで出かかったが、抑えた私はとっても偉いと思う。楚方にアドバイス、ねぇ。無いことは無い。けれど、今まで言わずにいたちゃんとした理由もある。これは私の独断ではダメだ。彼方さん。
見上げた彼女と目が合った。頭に浮かんだことはきっと同じ。実は……この中では、私と彼方さんしか知らないであろうことがある。
「言ってもいいですか？」
「う〜ん…………いや、でも。やっぱりまだ早いんじゃないかなぁ」
「いつかは知ることになるでしょ。ま、最終判断は彼方さんに一任されているので無理強いはしませんが……。誰かに守られて、それで楚方は襲名できるんですかね？」
襲名。研究生全員が、目指すところ。私へ向いていた視線が彼方さんに移った。楚方も「お姉……？？」と微かにこぼす。
彼方さんが不安になるのも最もだ。二人は私と燈と違って仲良しの姉妹。もし『あのこと』を伝えて、楚方が泣くことになれば。姉としては複雑だろう。私だって、小さな女の子を悲しませることは本望じゃない。
けれど、本当にそれでいいのかとも思う。藍花星を一度撤退した際に彼女は言った。怖い顔をしたDES兵を前にして怯み、才加さんに助けられたと。護衛だから？ 二回目もそうする？ もし鈴子がピンチになっても、自分ではなく誰かに助けを求めるのか？ それじゃ駄目でしょ。
「……そうだね。年齢なんて関係ない。前にツバサさんが言った通り、楚方の人生を決めるのは楚方だけだ。わたしとしては、もう少し黙ってた方がいいと思うけど楚方は輝きたい……んだもんね」
「いったい、どういうことですの？」
「それについては私が。端的に言うと、楚方宛にアンチレターが届いているんです。……まりこ様は分かると思いますが、それが研究生の手に渡ることは基本無い」
少し前まで研究生だったまりこ様なら、その辺については私たちより詳しいだろう。彼女が言うには、研究生宛のものは渡す前に入念なチェックがされる。織音のことがあり、以前にも増して徹底するようになったらしい。
だから、多くの研究生が目を通すのは好意的な手紙のみ。いわゆるファンレター。……でも例外もある。本人が希望すればアンチレターも預かれる。
ちなみに私は受け取っている。総選挙後には智恵理もそうしていた。自分が選ばれたから、涙を流した先輩たちがいる。その責任を果たすためにも、アンチの言葉に耳を傾けるようになったのだ。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
