746# 影の立役者 ページ46
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声の主を見やる。ぽつり、想いを口にしたのは真琴。
出会った頃からしたら意外も意外。やっぱり彼女は変わった。
「負けたくない……。うちだって！」
「！ そなたも！ もっとキラキラしたぁ〜い！！」
便乗するみたいに楚方は万歳しながら立ち上がり、抽象的だけど決意表明。上を目指したいとのこと。待て待て、はぁ？ 先を歩く同期は凪沙と智恵理だけじゃないんだけど！
私はぷくりと頬を膨らませ、分かりやすく不満を表に出す。なんだ、真琴は私のことは眼中にありませんってか？
「凄いのは凪沙と智恵理だけで、私は同列だと思ってんの？ へぇー」
「そ、そういう訳じゃ……ほら！ 目標は高い方がいいって言うじゃん」
「頑張れるならいいけどね。高すぎる目標は、時に現実とのギャップで首を絞めるよ。……別に、私が二人と同じなんて言わない。でも、アンダーや選抜、他にも。場数を踏んでいる私を無視するなんていい度胸だよねぇ」
まりこ様は軽やかに笑って、彼方さんは苦笑い。私は何も、みんなを下に見ているわけではない。後ろにいると思っていた奴がいつの間にか前にいることを、つい最近も経験したばかりだもの。
凪沙みたいに化ける可能性は誰だってある。同期に負けじとする誰かが、私を通過点としたら……「むかつく」。私が駄目みたいだ。
いただけるお仕事も、才加さんのアンダーも、総選挙における選抜も。誰だってできることじゃないのに。みんなが凪沙や智恵理しか見据えないから、イマイチ凄さが伝わっていないように感じた。
「次は真琴の背中、押さないから」
「！ うん、もう一人で飛び降りれる。あのときはほんまにありがとう」
前も言ったが、別に真琴のためじゃない。彼女の成長に繋がったのは副産物に過ぎない。真琴は今まで、カメラはカメラでも内側のレンズ……いわゆるインカメラの自分の写りばかり気にしていた。
外側のレンズ……アウトカメラの景色を知らない、本当は誰も見ていない。だから刺さらない。真琴は、目標すらピンボケしていたと思う。私のおかげでそれに気づけた。だから「ありがとう」と感謝を言われる。
「……あ、そっか」
「織音？」
「A、わたしが初めてアンチから手紙をもらって……レッスン室を飛び出したこと、覚えてる？」
「そんなこともあったね」
「今のわたしが【指原莉乃】には何も及ばないからこそ努力すべきってこと、気づけたのはAのおかげだよ。だからもう一回、ありがとう」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
