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当時、三人は智恵理に誘われて00のライブに行った。あの頃の藍花星は完全に近い芸能禁止だったらしい。生まれてから芸能という単語を聞いたことはあっても、それが何なのかはわからない。
禁止が当たり前の星の人々がライブへ行くのは簡単なことではない。気持ちは分かる。今でこそ双湖星は宇宙一の観光星だが、かつては人が集まるイベントの取り締まりが厳しく、そういう話が聞こえれば交通規制も珍しくなかった。
ライブはTVでも観れる。そうだけど、そうじゃない。生でしか感じられない高揚や得られない感動がある。この場の熱の一部になったような。アイドルが近くに来てくれて、目が合い、認知してくれるのがファンにとってどれだけ嬉しいか。
「ていうかごめん。話逸れたわ、続けて」
「あ、うん。それでね……、」
藍花星では常時DES兵がうろちょろしていて、地上から行くものなら止められる人もいたらしい。彼女たちは下水道を通り、地下道へ。あと少しまで来たところでovertureが聴こえて、最後駆け上った。
芸能を禁ずる星で、子どもだけでライブを見に行くとか。サーベルひとつだけで射手座星の船に乗り込み、D.G.T.O.やDES軍を動かせる父親に話をしに行くとか、大事な友達を追いかけて後先考えずに動くとか。
「無茶でも無理でも、自分の想いを叶えるために……」
「かっこいいですわねぇ〜」
方法がそれしかないのなら。どんなに難題でも、あの子たちは挑む。彼方さんが言った無茶と無理のオンパレードだとしても諦めないで……。まりこ様はまるで星空を見るみたいに天井を仰いだ。
そう言った後、鈴子が一息をつく。まだ疲労が残っているようにどこか元気がない。すかさず楚方が「リンダぁ？」と親友の名を呼ぶ。
「わたしは……色々、考えすぎていたのかもしれません」
「ああいう無茶な子たちが、センターノヴァになれるのかしらぁ〜」
「センターノヴァ……」
友歌は、その言葉を繰り返した。……ねえ、センターノヴァ復活が発表された直後のことを覚えてる？ 同時に発表された総選挙に意識を引っ張られて、殆どは忘れたかもしれない。あの日、友歌は『うちらにセンター争いは関係ない』と言ったんだ。
当時は本当にそう思った。けれど今は違う。襲名せずとも、研究生になってまだ半年だろうと。周りの制止を無視して、たとえ一人でも立ち向かう智恵理。友達のために駆け出せる凪沙。今の二人なら、夢物語ではない。
「負けたくないな……」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
