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襲名を目指して頑張る日々。それがまた訪れても、疑問を解消するようなヒントすらなければ何も変わらない。変われない。たとえ輝くことはできても、それが増す可能性は限りなく低いだろう。
歩きながら独り言が漏れる。キララになら聞かれてもなんの問題もないか。あのね、私ね。あのとき……総選挙が終わってから、漠然とした不安を感じていたの。……そしてあの日、優子さんに続いてセンターノヴァ宣言をした日から凪沙が怖いんだ。
普段はみんなとワイワイって、どこにでもいる女の子に見えるのに。いざというときには一番前に出て、誰よりも目を惹く。さっきまで後ろにいたのに、もう前にいる。あっという間に抜かれてしまったような。
凪沙は実はすごいポテンシャルを秘めていて、気持ちが向いて初めて本来の力が解放される子なんだ。ここに智恵理が揃えば勝ち目なんて無し。伸ばしかけた手を反射的に引っ込めた。私は、凪沙と智恵理っていう恒星の周りを回る惑星のひとつでしかないことを痛感した。
「やっぱり私には無理っぽい」
強く輝くのも、センターへの執着心も。それらを本気で求められない自分が、あの子たちよりも観衆の目を集めるなんて不可能なんだ。みぃちゃんは何も贔屓なんてしていなかった。
でも、それでもね。自分の気持ちに嘘はつけない。凪沙や智恵理は凄いなぁ。私は……責任を負いたくないもん。誰かの期待に応える為だけに努力するのはもうしたくない。まず自分のために頑張る。その延長に、仲間やファンの人たちがいると思ってる。
「ここにいたんですのね」
「！ まりこ様」
暗闇から人影が現れる。気配に気づかないくらい思案に入っていたらしい。やっば……聞かれちゃったかな？ 出方を窺うが、まりこ様はいつもと同じ。うふ、と見慣れた笑みを浮かべている。
8代目まりこ様は、襲名後も私たちと一緒に行動している。面倒みの良さは相変わらずだ。それが好かれる要因の一つでもあるんだろう。相手の立場になって考えることができる人。
「みんなも起きてるみたいですわぁ〜。一緒に行かない？」
「はい、いつものところですかね」
今度は二人並んで歩く。
「ねえA。ちゃんと言ったこと無かったけど……私、研究生の頃からあなたを尊敬しているんですのよ」
「はい？ まりこ様が……ですか？ でも私は後輩で、まだ研究生で」
「そんなの関係ありません。……って、前に彼方にも言ったでしょう？」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
