732 ページ32
▽
「私も00の一員なのに決して邪険にしない。深く頭を下げてくれるんです。そして終始、智恵理を『芸能に洗脳された者』ではなく『仕える大切なお嬢様』として接していました」
友「それで寮にいなかったんだ……」
「うん。私も当日の朝に突然誘われたから、鈴子に外出することだけ伝えて出ちゃったの。あの日は練習できなくてごめんね」
出かけて何があったかはかなり割愛した。例えばゾディアックが智恵理へ仕事を増やしていたとか、裁判も仕組まれていたとか。同期で仲間の父親に他にも罪があるんだと、これ以上ヘイトを稼ぐのは良いとは言えない。
悪くいう訳にもいかないしね。そうすれば智恵理がまた自分のせいでと言い、自分を責める。怒りからは何も生まれない。正常な判断も阻害する。伝わるとしたら、智恵理が自分の口で話すときだ。
「携帯が生きてるなら安永さんを頼らないはずがない。そして彼女が望むなら、安全なルートで必ず父親と会えるよう取り計らうはず。私はそう思う」
「凪沙も、大丈夫かな？」
「うん。私にしてくれた態度が答えだよ。それに凪沙は……智恵理にとって、初めての友達でライバルなんでしょ？ ぞんざいに扱われたら大切なお嬢様の反感を買うことぐらい安永さんはわかってるって」
納得して貰えただろうか。少しは安心しただろうか。
じゃあ次の話に移ろう。私はこんな話をしに来たのではない。
「ここに来る前、ツバサさんたちに会って話しました。現時点のことについて伝えますね」
ツバサさん。その名前を出したら目を開く面々。
WOTAと連絡できる状態になったこと。凪沙と智恵理に関しては主に彼らが情報を集めて、みぃちゃんと葵平先生も加わって作戦を練っていること。そしてツバサさんが今、たかみなさんとゆきりんさんも一緒になってとある作戦を立てていることも。
「作戦って？」
「秋葉星奪還作戦」
「えっ！？」
「秋葉星を、取り戻せる……！？」
織音は食べる手を止める。壁に背中をつけていた彼方さんは背筋を正す。楚方には笑顔を浮かんで鈴子に抱きつく。気が早い。仲間が行方知れずとなってから下がりっぱなしだったみんなの眉が緩やかな弧を描く。
やっと見えた希望。色々起こりすぎて、すごく長い時間悩んだように感じるけれど。秋葉星を出てから実はまだ24時間も経っていないんだ。でも辛かった、苦しかった。秋葉星に帰りたい、日常に戻りたい。
「みんなに会いたい。ライブが……したいなぁ」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
