729# あと僅かの辛抱 ページ29
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友歌と楚方の背中、ちょうど真後ろでは。彼方は腕組みをして壁に寄りかかっていた。唇は引き結び、俯いている。すぐ右隣には麻里子も膝を揃えてしゃがみこんでいた。
射手座星を一瞥した鈴子と真琴は、先輩二人に近寄る。ここにいる全員、織音が言ったことを理解してるつもりだ。特に彼方と麻里子は頭に血が登る智恵理を一度目にしている。気持ちは分かる。もし自分の親が同じことになったら、彼女たちだってじっとなんてできなかったと思う。
「ゾディアックの本拠地に、二人っきりで乗り込むなんて無茶です……！」
「助けにいかないんですか！？」
「……ツバサさんたちが、作戦を立てていますわぁ。もう少し、待ちましょう……」
共に行動してたと言っても、鈴子と真琴にとって凪沙と智恵理は同期でもある。気が気でなくなるのは当然。きっと無事である、そんな希望を持つほど悠長じゃない。なんせ、あそこは芸能と名のつくものを真っ向から拒絶する星なのだ。
しかし、無策に飛び込むわけにも行かない。00は今まで何度も芸能禁止を掲げる星でライブを行ってきた。巨大軍事企業として名を知られるゾディアック・コーポレーション。物資の補給ができない00と、芸能に抵抗する手段も武器もほぼ無尽蔵である射手座星。
現状では動けない。それも分かっているからか、彼方は左の拳で壁を殴る。その手に込められたのは怒り、そして不甲斐なさ。
「情けない！ ……わたしたちは本当になにも出来ないの？」
秋葉星だけではなく、今度は仲間が。一緒にステージを作る友まで危険な目にあってしまったら。
彼方は疼く感情はあれど、周りに当たるのは違う。そう思ったから向けた拳、出た言葉。それはみんなの発散できない想いを代弁したようだった。
だけども。これに彼女は言ってあげる。
「頼られなかったら無力なんですか？」
第三者の声に最初に反応したのは真琴。他のメンバーも続く。
そこに立っていたのは、凪沙と智恵理の所在が不明と確定してから姿を消していたAだった。織音が一番に声をかける。
Aがたかみなに一言残していった後、麻里子はAはどこへいるのか尋ねたのだ。たかみなに「疲れてるみたいだからちょっと休ませてやって」と言われ、またキャプテンが言うのに探すのも憚られると。研究生にも放っておくように言っておいたのだ。
「何か食べた？」
「んーんジュースだけ。織音、開いてないの貰っていい？」
「うん」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
