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▼Mikako
当の本人は目をぱちくり。短く「え」と漏らす。
……んん？ ウソでしょ、ついさっきまで浮かない顔してたじゃん。あれはA自身の行いに対して、本当のところでは許せないのだと思ったのに。
「あのー……私、みんなに悪いなんて微塵も思ってないよ。いやマジで。…………そんな顔してた？」
「え、さっきの無自覚なの？」
「さあ……。私さ、自分で言うのもなんだけど合理性がある嘘しかつかないし。分かりやすく言うと、デメリットがないものね。罪悪感を抱く必要がどこにあるの？ 誰にもせめられたわけじゃないのに」
た、たしかに……。じゃあ、と。先程のシリアスは何だったのか問いたくなった。どこに行った？ ていうか見間違い？ そう、疑うほどAは本当にケロッとしてる。ふふふ、と笑って「変なみぃちゃん」まで言われる始末。
なにこれ、あたしがいきなり的はずれなことを言ったみたい。超スベった。グループの滑り担当は
「多分……今まで敬語だったからじゃないかなぁ。まゆゆさんじゃないけど、私もファンやカメラの前以外だと表情は乏しい方だもん」
「あぁ、あたしたちは昨日までファンと推しメン。それだけだったから知らなかったわけね〜。Aと顔を合わせるのも、熱海星の夜を除けば仕事オンリーだったし」
「うん。でもその『仕事』も全然会えてないけどね。智恵理とはそれより前、総選挙の投票期間から仕事してたんだって？ 優子さんに聞いた。……ずるいよ」
むう。Aは拗ねるように口を前に突き出す。……ここで話す前なら意外に思ったかもしれない。智恵理と優子の仕事を担当したのは組織の指示。彼女は「別に気にしてない」と言うが……。
総選挙。入って半年そこらの研究生が何の後ろ盾もなく上位10人に残るなんて、並大抵の努力と人気じゃ有り得ない。もしゾディアックが応援しなかったら、結果はきっと違っていたはず。
「ファンに感謝してる。そのおかげで、ステージに立てたんだから。想いを伝えられて、ライブ以外でも会える機会が増えた…………でも、」
理由があったとはいえ智恵理ばっかり、そして。
「観客はより強い輝きに惹かれる、そう思ってたのに。見てたのはセンターノヴァだけ。ショックじゃなかったと言えば、嘘になるかな」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
