721# すなお ページ21
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一喜一憂していたら私の心が持たない。私の防衛反応は、幼いながらにそう感じたんだろう。いつからかは覚えていない。自分のことすら客観的に見るようになった。つまりは全てを他人事に思うようになったということだ。
こうしたら傷つかない。必要以上に疲れないで済む。何かを失ったことに気づきながらも、考えるのはやめた。
当時の私が一番大切にしていたのは母の期待に応えることだ。彼女や妹に何を言われても気力を絶やさない、それが最優先だったから。たとえば友達なんて二の次である。
「今から言うことは、研究生には言わないでくれる？」
「うん」
「智恵理は……自分の父親と話をしたがってた」
秋葉星から撤退後にみぃちゃんから事情を聴いていたときのことだ。星への攻撃にゾディアック、しいては肉親が関係していると分かった途端に彼女は駆け出す。あのときは凪沙が「無理だよ」と言い、たかみなさんにも「落ち着きな」と制止されたけれど……智恵理は諦めていなかった。
どこかでチャンスがあれば…………。そんなところに憤鬼星の件が転がり込む。更にはDES軍ではなく、ゾディアックグループが所持する機体まで。私たちはそこで、歌うことで言葉の通じないフンギーとも心を通わせた。ならば、
「私たちは、一目見ただけじゃDES軍とゾディアックの機体の違いなんてわからない」
「まあ元々はDES機もゾディアックが製造してるしね」
「でも智恵理は違うと言った。社長令嬢は伊達じゃなかったらしいね、彼女は誰よりもゾディアックに詳しい。森への再攻撃は不可能、それすなわち増援の可能性は無いに等しい。ならば向こうが次にする行動は？」
「…………あ、撤退しかない」
彼らはゾディアックの社員で兵士では無い。軍事企業ではあるが、DES軍までの武器は保有しておらず。あっても、フンギーを排除するための最低限の装備に過ぎない。生憎、我々との戦闘で使い切ってしまったのだとしたら。
目的は採掘だ。なのに、抵抗するには人数も武器も何もかもが手薄である。二度もかち合ってしまえば、援軍が到着するまで身を隠すことは到底できないと考えるのが自然。
「ゾディアックの持ち物だし、間違いなく射手座星へ帰還するだろうね。そう、智恵理の故郷に」
「…………」
「同期の家族を悪く言いたくないけど、みぃちゃんやDES軍を駒としか見てない人だよ。自分では決して手を汚さない。今この時も、高い確率で本社にいるんじゃないかな」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年11月16日 23時
