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00で今、最も注目されている9代目大島優子さん。そんな人が、あんな場所でひとりで歌っている……。智恵理曰く「総選挙で1位になっても、まだ満足していない。今よりも更に上を求める……叫びみたい」な歌声を披露している。
それを聞いた凪沙は「そんな……」。急にガクンと力が抜けたみたいに原っぱに手を付いて下を向いた。その様子に友歌が「どうした凪沙」と背中に触れようとすると。沈黙の末にこんなことをポツリこぼした。
「かっこよすぎる……」
「……え？」
「うわぁーん！ 優子さんの写真、片付けちゃったの勿体なかったかなぁー！？ ……やっぱり、また貼ろうかなぁ〜あはは」
ただの惚気じゃん。少しでも心配した私が馬鹿だった。凪沙は幸せそうに笑いながらクネクネしている。憧れるのは辞めても、彼女は優子さんのファンだから。そういうファン心理は私も理解しているつもり。
みぃちゃんが00のスタッフ入りした当日だって。私も、みんなから見たらあんな感じだったかもしれないし。私たちもAKB0048なんだから、ファン丸出しの言動は辞めた方がいい、なんてこと。言えるような人間じゃない。
「優子さんの新しい生ホロありますよ」
「おおー！」
「真琴さんのホロカードと掛け合わせなら、格安でお譲りできますが」
「すーずーこぉーーー」
すーちゃんさんの襲名もあり、発売が今日に延期された立体生写真の新シリーズだ。もうチェックしてるなんて。さすが鈴子。
更に興奮する凪沙。にっこり笑う鈴子。その彼女に、後ろから抱きついて恨むような目で見ている真琴。それを見てたら、視界の端の智恵理はまったく違う方を見ていることに気づいた。視線は相変わらず優子さんの方。
その向こうに夜の色が見えた。なのに、優子さんは歌い続けている。私たちは声をかけることはせず、ていうかかけられず。再び帰り道を辿ることにした。
..
夜。夕食が済み、21時をまわっても。寮のレッスン室には灯りがあった。明日の劇場公演では76期が前座を務め、チーム00が本公演をする日。最近は襲名が続いたり、日中に仕事があったり。中々全員が揃ってレッスンができない。
キュッキュッ、ダン。牛山がストップを言うと、音は息切れに変わった。時間は限られている。そのため鋭い指摘がメンバーへとんでいく。
「こじはるとすーちゃん、遅れてる！」
「「はい！」」
「麻里子は周りを見て！ ともちんの位置までスライド！」
「はいっ！」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年9月20日 10時
