606# 渇望 ページ6
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他の同期たちは今日の夕飯はなんだろうと話している。その中で楚方は突然、何かを見つけたらしい。外を見ながら「あーっ！」と声を上げた。私を含めた面々は思わず楚方に注目。どうしたの？
訊けば「ゆうこだ！」。そして閉じている乗車口に手と顔をビタりとつける。これに分かりやすく、誰よりも先に反応したのは凪沙。ひと目見ようとバッと立ち上がる。楚方と同じように手と額をくっつけた。ていうか、さ……。
「どこどこ？」
「あそこ！ タービンのとこ！」
「だ、誰かいそうな気配はするけど……」
全然見えない。ここからじゃ人の姿なんてゴマ粒だろう。視力良すぎるでしょ。さすが野生児並の運動能力を持つ楚方。それか、00の最年少ということでまだまだ伸び盛りの子どもだからなのか。
座っていた面々もタービンを見やる。しかしピンとは来なかった。見える見えないは置いといて、あんなところで何をしているんだろう。最近、智恵理はたまにメガネをかけるようになった。といっても、仕事や公演のときはコンタクト。ダンス中に落ちるのを危惧してのこと。
優子さんの姿はメガネをかけた智恵理にも見えたらしい。凪沙も気になるみたい。最寄り駅では無いけれど、私たちは次の駅で電車を降りた。そして、例のタービンまで向かう。
彼女は本当にそこにいた。私たちに見えるのは背中側。優子さんは何か叫ぶように、訴えるかのように。時折肩を大きく上下させ、体を揺らす。……けれど、何を言っているかまでは分からない。タービンが稼働して「ゴオオオオ」と絶え間ない音にかき消されていたから。
しかし、耳を澄ませていた凪沙は「やっぱ、素敵な声だなぁ」。マジか、聞こえるの？ 私も髪を耳にかけて優子さんの方に傾ける。
………うーん、まあ聞こえるような？ 歌だ。この曲は『風は吹いている』。みんなも目を閉じて耳を澄ませた。全ての感覚を研ぎ澄ますかのように。
「この地響きみたいな、タービンの音の中で聞こえるなんて」
「でも……たしかに優子さんの歌声です」
「優子さんの気持ちが伝わってくる……」
「え？」
「どういうこと？」
彼方さんと織音の後、智恵理が言ったことに友歌と凪沙が首を傾げた。
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タービン
：流体の有するエネルギーを機械的動力に変換する機械。流体から力を受ける多数の羽根を備えた羽根車が、その主要部となっているもの。正直アニメで実際にものを見た方がいいと思う。作者には分かりやすく説明できない
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年9月20日 10時
