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センターにしか見えない景色。それは一瞬だ。ほんの少し許された何分という短い時間だけ。しかしセンターノヴァは違う。公演をするならば、ゲリラライブをしたならば。アンコールが続く限り永遠に見ることが出来る。
真のセンターにだけ許された称号、センターノヴァ。そのポジションを任されたメンバーは自身のみ。誰のアンダーを務めることもない。自分以外に、前に立つ者はいない。そこから見える世界はきっと特別なものだ。…………そう、ある意味では。
「みんなの歌声を背に、あたしの視界にはファンのみんなと輝いているキララだけが映っていた。でも、その日は違うものが見えたの。あれは……人の形をしていた」
「人？」
「目の前だけじゃない。あの場にいたキララの形が粘土みたいに変形して顔や手に見えたわ。まるであたしを捕まえるように迫ってきた。顔に触れそうになって、そのとき感じた恐怖は今でも鮮明に覚えている」
私たちは優子さんの頭上にゲートを見た。彼女が消えたとき、近くにいた。今更何を言われても冗談やハッタリだと否定する者はいない。不可思議なことが現実で起こったんだ。みぃちゃんが言ったのは、きっと本当のこと。
優子さんも。溢れる自身のオーラでキララの輝きを増し、あの場でセンターノヴァとして覚醒した。
「……たかみなさん。私も喋っていいですか」
「ん？」
「ずっと考えていたんです。あれはなんだったのかって。ゲートの先を、仮に向こう側の世界と称しましょう。これは私の推測です。……みぃちゃん」
彼女と再び目が合う。
みぃちゃんは知ってるんだよね。あの瞬間、向こう側の世界と繋がったのは優子さんっていうセンターノヴァがいたから。ゲートを扉とするなら、センターノヴァは鍵。覚醒したことで条件が揃ってしまった。
「あと今の話を聞いて思いました。その人の形をしたキララって、消えたセンターノヴァたちなんですか？」
「「「！？」」」／「……！」
「やだなぁ、凪沙と智恵理まで驚かないでよ。私は候補生のとき、セレクション審査の構造を見抜いた人間だよ。それに、記憶力や思考力にも自信がある」
00に残っているセンターノヴァの情報と、この目で見たこと。加えてみぃちゃんの話。それらから導いた可能性である。
なんでもないことのようにペラペラ話す私。みんなは目を丸くした。ま、そうなるよね。でも、私が知っていることを話すタイミングは今だと思ったんだよ。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年9月20日 10時
