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秋葉星が急襲されて約二時間後。藍花星には朝日がのぼっていた。
いつもはどんより灰色の雲に覆われているのに今日は快晴だ。工場からの汚れた煙はあるも、こんなに晴れた日は久しぶり。知らせを聞いた芸能反対派の人間は「夜明け」と評するかもしれない。
「どういうことですか」
「今、言った通りだ。君には、デュアリウム採掘課に移ってもらう」
場所は芸能管理局、その中の芸能管理課。凪沙の父が所属しているところだ。始業時間になって早々に彼は上司……課長室に呼ばれる。彼の同僚たちはPCを立ち上げているものの仕事の手は動かず。ほぼ全員がガラス窓から様子を伺っていた。
何を話しているか声は聞こえない。だが、芸能管理課の課長は推進・抑止・反対派……この三派閥をまとめる位置にいる。75･77期研究生によるライブのおかげで急激な芸能禁止活動は無くなったものの、まだまだ芸能は許されていない。DESの支配下にある星で課長職につくこの男も、上の機嫌や収入の安定を望むなら抑止または反対寄りなんだろう。
「どうして急に……。以前提出したレポートは読んでいただけたはずです」
「……ん？ あぁ、芸能と労働効率の関係が……どうとかってやつだったねえ。……うん、現場の意見としてね。非常に参考になったよ」
「上層部に、上げていただく約束です」
「まあまあ。ゾディアック本社直々のご指名でねえ。よろしく頼むよ」
ゾディアック。その単語に、凪沙の父は唖然とした。それは、DESやD.G.T.Oに力を貸す巨大軍事企業だ。芸能管理局に席を置く彼も当然知っている。そして、デュアリウム採掘課にゾディアックの息がかかっていることも。
AKB0048の研究生である本宮凪沙。彼女は娘である。身柄を釈放され、仕事に復帰。管理局内には知れ渡っているだろう。それを踏まえて「ゾディアック本社直々の指名」だ。何か裏があるとしか思えない。
話す相手が部下とはいえ、右耳の掃除をしながら上司は伝えた。藍花星で芸能を解放した場合のメリットについて綴ったレポートも、おそらく最後まで読んでいないのだろう。
凪沙の父親にとっては、いつも渋々言うことを聞いていた娘が夢を叶えるために初めて自分に反抗した。DES軍に「やめさせろ」と言われて、はっきり断った。そしてライブ後。彼は、家族のために出来ることをしようと決めたのだ。…………それなのに。
「ああそれから……。秋葉星が、DES軍に制圧されたってねえ」
「！ 本当ですか！」
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年9月20日 10時
