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息をするのも忘れた。
「嘘……」
「優子！」
最初に震えながら発したのはまりこ様。荒らげて呼ぶのはゆいはんさんだ。しかし……返事はない。呆然とする私たちを現実に戻してくれたのは、ツバサさんの声。切羽詰まった様子で『キララドライブの発進準備が出来たわ！ みんな早く乗って！』。
ハッとする。辺りを見れば、爆発を逃れた敵機が何機もこちらに向かってきていた。だが、後ろ髪を思い切り掴まれたかのように私たちは動けない。何が起こったの……？ 優子さんも……あっちゃんのラストライブのときのように、文字通りメンバーの目の前で消えてしまったのか。
DESに一矢報いるなんて不可能を可能にした光。私の仮説が正しければ、優子さんはゲートの向こう側に引きずり込まれたかもしれない。……だがそんな突飛な可能性、同期たちは考えうるはずもなく。
「凪沙……ね、今は行こう？」
「…………」
「凪沙……？」
私は消えません。優子さんなら大丈夫。……本人の総選挙スピーチ、智恵理が公演前に言ったこと。やっぱり歴史を変えることはできなかったか。
ツバサさんと、たかみなさんの声。ひとまず私たちはフライングゲット号の方へ…………でも。凪沙だけはまだ動かない。険しい表情の智恵理も腕を引っ張るが、駄目。優子さんの行方に心が置いてけぼりになっている。ピンチにも気づいていないらしい。……ああもう。
私はスカートの中に手を伸ばす。二次災害を防ぐために。
「ミサイリウム！」
「！ …………あっ……」
「ボーッとしないで、死にたいの！？ 智恵理、今のうちに」
あんただけじゃない。苦しいのも受け止められないのもみんな同じなんだ。だけど必死で心を動かしている。平気なわけないじゃん。私だってそうだよ。理屈は整理できても感情はまぜこぜだ。
仮に引きずり込まれたとしよう。それで生きている保証もどこにもない。これがどれだけ大変なことか分かってる。更には秋葉星も、するはずだった研究生公演も。私たちは生きて、考えなければいけない。
これでミサイリウムは最後。まゆゆさんと、LASに乗った佐江さんと葵平先生。三人のサポートも加わり、敵機の目くらましに成功する。その隙に他のメンバーは乗船、私たちも猛スピードで飛び乗った。
『緊急キララドライブ発進！』
まゆゆさんが「A、」と手を伸ばす。掴まれってことか。ガシと握れば船内は大きく傾く。油断すると飛ばされてしまいそうだ。
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2023年9月20日 10時
