いえ、いいえ、いえ！ svt T8

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｢わからへん、ほんまに｣

わからないを繰り返してるうちに私は、今までの疲れがこみあげて涙が出てきた。
隣にはミンハオがいるのに、大声をあげて泣いてしまう。
過呼吸を起こしそうになるけど、ミンハオは今私に構ってもどうしようもないということを理解してずっと傍で見守っているようだった。

そして泣き疲れた私はいつの間にか寝ていたようで、目覚めたら私の肩にブランケットがかけられていた。


｢……あ、ごめん、ありがとう｣

傍には相変わらず彼がいた。
体勢を変えて、一度ソファに座り直す。テーブルに視線をうつすと、いれたてのココアが二つ並べられていた。


｢俺は、Aが幸せならそれでいいと思っていたけど、それじゃだめだったみたい｣
｢え？｣
｢こうやって俺の家に住ませたらAは生活が困らなくて安心して過ごせるって思ってた。違った。気付けば俺はAに怖い目にあわせていた。かく言う俺も、Aが別のところに行くのが惜しくて絵を描くなんて理由をつけてずっとここに縛り付けていた｣
｢いいよ、それは｣

ふと横顔を見る。本当に綺麗な形をしていた。

──｢明日海に行こう｣



｢え？｣


突拍子もない発言に私は思わず笑う。

｢俺でよかったら、の話だけど。……気分転換にさ｣


私は同居人の知られざる優しさに触れて、やや驚く。そして海の誘いは今の私にとって、救いになるような誘いだったようでさっきまでの曇った気分はどこへやら、私は目を輝かせて｢うん、行きたい｣と言った。

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