太陽 竈門炭治郎 ページ20
「炭治郎君……あのう」
後ろから私を抱き締めている状態のまま、もうずっと固まっている炭治郎君。トントン、と炭治郎君の腕を軽く叩くと、炭治郎君がもぞもぞと動いた。
「どうしたんだ?」
「もうそろそろ離れてほしいなあ、なんて」
そう言うと、炭治郎君は捨てられた仔犬の目をして私を見たから、何も言えなくなってしまった。
このやりとりが続いている。もう何度もやっているから、実は炭治郎君が分かっててやっているんじゃないかと疑ってしまう。
「うぅ……でも、その……もう充分じゃないかなって」
「そんな事はないな」
「……飽きないの?」
「Aの匂いは幾ら嗅いでも飽きない」
さっきから息が首もとに当たってくすぐったいのだけれど、それを我慢して炭治郎君と話す。
思い返せば、初めて会った時から炭治郎君はこの調子だった。炭治郎君はよく鼻が利くらしく、開口一番に告白されたんだっけ。確か、
「君の匂いは、これまで嗅いだ誰よりも好きなんだ」
「!?」
私の思い出をなぞるように口に出すから、私はびっくりして炭治郎君を凝視してしまった。そんな私を見て、炭治郎君は優しく微笑んだ。
「いつか俺を心から欲してるような匂いが嗅ぎたいなぁ」
「っ……恥ずかしいよ!!」
顔が真っ赤な私を見て、炭治郎君が愛しそうに笑う。その表情に堪えきれずに、私はもっと顔を真っ赤にした。
結局は炭治郎君の求婚に私が根負けして付き合う事になったんだけれど、でも、離れることは出来そうにないから、困ったものだ。だって、こんなにたくさん、純粋な愛にあてられて、離れろというのも酷な話でしょ?
「あとちょっとだけ許してくれないか」
「……しょうがないなぁ」
この人にたっぷりと甘い私にも困ってしまう。私はきっと、炭治郎君の事はずっと好きなんだもの。炭治郎君もそれを分かってるから、ずるい。
いつもの天然で素直な炭治郎君はどこに行ったんだろう。出来れば今すぐに戻ってきてほしい。
「……お日様が気持ちいいな」
「そうだね。寝てしまいそう」
炭治郎君と出会ったのも、同じようにお日様がぽかぽかとしている春の日だった。もう一年かぁ、なんてのんびりと考えて、小さくあくびした。
38人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
林檎好き系猫 - 私も好きです!!(突然の告白返し) リクエスト承りました! (2020年3月20日 10時) (レス) id: d94760e07b (このIDを非表示/違反報告)
いぇあ - 凄く好きです!!!(突然の告白)リクエストで、キメツ学園の炭治郎と日向ぼっこでよろしいでしょうか…? (2020年3月19日 18時) (レス) id: 578a6cecc2 (このIDを非表示/違反報告)
林檎好き系猫 - 凪さん» リクエストは随時募集中ですので、是非。キャラクター、希望であればシチュエーションもお願いします (2020年2月22日 11時) (レス) id: d94760e07b (このIDを非表示/違反報告)
凪 - よろしければ、リクお願いしてもいいでしょうか? (2020年2月22日 0時) (レス) id: b575dccd32 (このIDを非表示/違反報告)
林檎好き系猫 - 碧佳さん» ありがとうございます。頑張ります。コメントは作者の動力源です(笑) (2020年2月7日 20時) (レス) id: d94760e07b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ