魔法 ″ 東京Jr. (ページ3)

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ベンチの上でうずくまっていると、突然目の前にハンカチが差し出された。

『 Aさん…だよね…？
何こんなとこで泣いてんの。』

好きな人の声が聞こえる。

恐る恐る顔を上げると、心配そうにこちらを覗き込む作間くんの姿があった。

「なんでもないよ。」

『なんでもないなら
泣かないでしょ。』

ハンカチで涙を拭ってくれた。

きっと今の私の顔、めっちゃブスだろうな。瞼が重いし、鏡を見なくてもそう感じる。

『可愛いんだね、泣き顔も。』

「 …へ？」

『いっつも明るいじゃん？
俺とは対照的っていうか。
そんなAさんが
可愛いなって思ってたんだけど。
泣いてるところも可愛いんだね。』

作間くんの口から出てくる言葉は、どれも信じられないようなことばかりで。

『好きな人となんかあったの？』

「あの、ね… 」

『誰に何されたの？』

「そうじゃなくて、
作間…くん…のこと。」

『俺？』

自分を指差しながら、キョトンとした顔でこちらを見つめてくる。

いつもは素っ気ないのに、こういう時は優しいなんてあまりにも狡いよ。

「私の好きな人…
作間くん、だよ。」

「えっ」と静かに口が動いたのを見逃さなかった。

作間くんは、私の隣に腰をかける。

『さっき橋本くんから聞いてさ。
もしかしたら、Aちゃんの
好きな人さくちゃんかも！って。

全然自信なかったんだけど
俺もおんなじ気持ちだから。
それなら伝えたいって思って。
まさか駅で泣いてるとは
思いもしなかったんだけどね。』

「ほ、ほんとに…？」

『ほんとだよ。
俺、恋愛とか分かんないから
表に出せなくて悩んでたけど。
素っ気ない態度取っちゃって
ごめんね？…好きだからだよ。』

「嬉しすぎて、また泣いちゃいそう。
絶対うざがられてると思ってたの。
毎日挨拶し続けて、作間くんが読んでた
小説と同じ作者の本買ったりして。
気持ち悪いよね。彼女でもないのに。
…でも両想いだったなんて、幸せ。」

ぎこちなさそうに、私の頭を撫でてくれた。

同じクラスになって、毎日挨拶しているうちにいつのまにか作間くんも同じ気持ちになってくれていたんだ。

好きな人と両想いになれる、これ以上の幸せはあるだろうか。

これからも「おはよう」って言い続けよう。

片想いの相手じゃなくて、両想いの相手に。