振り回されて ″ はやしん ページ1
「 しんちゃん、」
『 んー?』
返事はしてくれるものの、かれこれ一時間近くスマホのゲームに没頭している。何度名前を呼んでも銃声が鳴り止まない。ちょっとぐらい構ってくれてもいいのに。
素直に「構って」と言えない私は体育座りをして黙って拗ねるだけ。拗ねてるなんてしんちゃんが気付くはずないのに。
『 うわ!最悪や!
回復せなあかん… 』
一人でスマホの画面に向かって、ぶつぶつと話している。
と思いきや、突然横から抱きしめられた。
『 疲れたから、俺は
Aで体力回復しよーっと。
構ってくれへんくて
拗ねてたんやろ?知ってるで。』
図星すぎて何も言えずにいると、にやりと口角を上げて私の顔を覗き込む。頬が熱くなって、鏡を見なくても赤面しているのが分かる。
怒っていたはずなのに、なんで簡単に許せてしまうんやろう。
『 許してくれる?』
「 …ばか。」
『 かーわいい。』
チュッとリップ音を立てながら、頬に柔らかい唇が当たる。
「 …なんでそんなに
意地悪ばっかするん。」
『 Aが可愛いから言うてるやん。』
冷たくて意地悪ばっかりするしんちゃんだけど、憎めないのはかっこよくてたまに優しくて大好きやから。そんなことを考えていると、自然に頬が緩んでしまう。
『 なににやけてんの?』
「 秘密。」
『 ふーん。』
そう素っ気なく返事をしたしんちゃんは、再びゲームを始めた。相変わらず気分屋だ。でもきっと私はそんなところも含めて好きになったんやと思う。
どんなに振り回されても、ずっと嫌いになれへんのやろうなあ。
「 しんちゃん、」
『 んー?』
「 好き。」
『 俺の方がす…
あー!やられた!』
はしゃいでいるしんちゃんを見て、つい笑みが溢れた。今度はちゃんと好きって聞かせてね。
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作者名:みるく | 作成日時:2018年7月15日 11時