家政婦から嫁になります【灰谷蘭】

・ ページ23

.




『…春千夜って意外と優しいんだね。』


春「意外とな。笑」


『初めて会った時は銃突き付けてきたけどね。』


春「…それは覚えてねーわ。」


『……でしょうね。笑』



あの時は春千夜は薬飲んでて荒れてたもんね。笑


2人で服や小物を見ながら他愛もない会話をして。
外でショッピングなんて久々だし
ちょっと楽しいかも。



『でもあの時ね、私が「春千夜」って名前呼んだら
春千夜、顔赤くしたの…それも覚えてない？」


春「…………。」


『あ…、これ可愛い…！ワンピース。靴も。
合わせて試着してみようかな。』



私はフィッティングルームに駆け込んだ。

着てみたら、やっぱり可愛い。

ヒールが高いパンプスも履いてみて、
広い試着室の中で鏡とにらめっこ状態。



春「A、着たら俺にも見せて。見たい。」



春千夜が試着室の前に来て私を呼んだ。
せっかくだから春千夜の意見も聞こうかな。



『いいよ！服も靴も欲しいかも…
春千夜に決めてもらう！』



私はそう言いながら試着室のドアを開けて、
春千夜の前でくるりと回って見せた。



春「……似合うじゃん。」



『ほんと…？
でもね、さっき見たバッグも可愛かったの。
どれも捨てがたくて…。』


春「お前が見てたのこれだろ？」


『それ…！！』



春千夜がさっき私が見てたバッグを持ってて、
私に持たせると鏡の方に向けさせた。

ぐ……やっぱ可愛い。



春「全部買ってやるって。」


『うそ…結構な金額になるよ？』


春「俺を誰だと思ってんの？このぐらい余裕だわ。」


『じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな…。
バッグ他の色もあったけど、この色でいいと思う？』



鏡越しに春千夜に問いかけると目が合った。


するとそのまま後ろから抱きしめられて。



春「…A……お前、可愛すぎ…」



私は手に持っていたバッグをその場で落とした。



『……っ…、春千夜…』



抱きしめてくる春千夜の腕を掴んでみたけど
離してくれない。




春「今だから言うけど。」



『…………？』



春「…さっきの話。」





さっきの話…？ なに…？





春「初めてお前に会った時、Aに一目惚れした。」





続けて「あの時のことはちゃんと覚えてる」
と耳元で言う。覚えてたんだ…





『…春千夜……離して…』




春「今もお前のこと欲しいと思ってる。」





春千夜はそう言いながら、私の左手を取ると
薬指に付けていた婚約指輪を外した。



.

・ ※→←春千夜

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す