藤棚 ページ6
瞼の裏が明るい。
短い影、白く光る布団。
消毒液の独特な香り。
病院?
「おはようございます。」
起き上がる前にゆっくりした動作で上から覗き込まれる。
濃い葡萄色の髪を、上の方で束ねた、美しい人。
アリアは思わず息を呑む。
髪飾りや、羽織の模様も、
この人の雰囲気も、仕草も、ちょうちょみたい。
優雅でどこか悲しげ。
「わたしの名前は、胡蝶しのぶです。」
鈴の音を鳴らすような声で彼女は言った。
「アリア・ノワール・グレーシア、です。」
「アリアちゃん、一通り検査は終わりました。
体に異常はありません。」
しのぶさんは、にっこり笑う。
ひとつひとつの動作が絵になるなぁ。
「お昼ご飯は食べられますか?」
「はい。」
言われて気がついた。
アリア、昨日から何も食べていない。
それはそうだよね。
ずっと気絶していたんだもん。
途端にお腹が空いてきた。
出されたお粥をいただきながら、しのぶさんをそっと見上げる。
なんだか、不思議な人。
怒ってるのに悲しんでる色がする。
過去になにかあったんだろうか。
アリアの「気がする」は、第六感は、よく当たるのだ。
そういう人って、なにかの拍子に壊れてしまって、取り返しのつかないことになるんだよなぁ。
こわいこわい。
ただ、目が合うと微笑んでくれる、すごく穏やかで優しいんだけどね。
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作者名:アスパラベーコン | 作成日時:2023年12月3日 0時