ヒメゴト ryosuke × yuri (ページ10)

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ep10 ページ10

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彼はわが国の恥である出来損ないの次男坊だった。

兄は立派な人で、彼とは正反対。

国王さまもこの世をさるとき、もっとも心配なのは国ではなく、このどうしようもない王子のことだと言っているらしい。

そんなことも知らず僕は毎日この部屋でしくしく泣いていたのだ。

「俺のあげた服は？またそんな汚い格好して」

固まった僕を気にかける様子もなく、彼は話を進めた。

「母さんがお前に会いたがってるんだよ。まだどうなるか分かんないし、うちの使用人たちはお前のこと森に住む変人だと思ってるからさあ、むかつくから早くあわせてやろうと思って」

「ま、まって.....おしろに行くの？」

「うん、他にどこに行くんだよ」

だって、僕の気持ちは？

そんなさらっとプロポーズされて、返事をする暇もなかったし、

こんなみすぼらしい姿の僕がお城に行ったところで門前払いされて当たり前だと思った。

「好きだよ、愛してるから。俺を信じてついてきてほしい」

どうしていいかわからないけど、でも引かれた手を離したらダメな気がして、

俄かに足を踏み入れしまった。

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彼はお城までの道のりを僕の手を握ったままでいてくれた。

ついても、足を動かせないでいる僕をエスコートしてくれて、

初めての馬車から覚束ない足取りで降りた。

ずらりと並んだ使用人たちが、彼に頭を下げる。

僕はびっくりして彼の後ろに隠れた。

一番手前にいたおばさまが僕を覗き込んで、

「すてきなお嬢さまじゃないですか。きっと国王さまもお喜びになられすよ。それに、あのおぼっちゃまがかっこよくエスコートなんてして、いつの間にそんなに立派になられたのやら」

と、涙ぐむ。

聞いていた話と少しちがう。

僕のことを森の奥に住む変人だと罵っていたおばさんには見えなかった。

むしろ歓迎されている。

「ごめんちょっと嘘ついた」

「なんでそんな嘘つくの」

「ぴいぴい泣いてかわいかったから揶揄いたくなった」

むっとする僕の頭をぽん、と撫でる彼を見て、また大勢の女中さんたちがうっとり声を上げる。

「はぁ、なんてかわいい二人なんでしょう」

「でも、お食事までにきれいなお洋服を用意いたしますね。あと、お化粧も」

女中さんたちに腕を引かれて、不安になって彼を見ると、

行っておいで、と優しく笑っていたから、言われた通りついて行くことにした。

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