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ep6 ページ6

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筋肉質なごつごつした腕が僕を後ろから抱きしめたままゆらゆらと揺れる。



「やっぱりもう会うのやめよ」



僕は口先で堪えていた言葉をついに漏らした。




「絶対に嫌」




彼の家出の原因は、父親との喧嘩。

お嫁さん候補20名と、誰か一人でもいいからお見合いしてくれと頼まれていたそうだ。


彼は逃げ出して、僕に会いにきた。




「それだけりょうすけは愛されてるんだよ。みんな心配してると思うから..... 」


「俺はお前じゃないと絶対に結婚しない」




ぜったい、とか、子どもっぽい言葉ばっかり使って、




「だめ。僕は男の子だし、森に住んでた野蛮な一般庶民なんかと結婚できないよ」


「誰も野蛮なんて言ってないだろ。自分のこと悪いように言うのやめろよ」





彼は真剣な顔でそう言って、僕は何も言い返せなくて、口を閉じる。


しゅんとなってしまった僕を見て、彼は抱きしめる力をすこし強めた。




「それに、ゆうりをもう一人にしたくないんだよ」




僕はずっと一人だったから、平気だよ、そんなこと。

そう言いたかったけど、一度出会ってしまったらもう元の生活には戻れなかった。



彼のいない日々を乗り越える勇気はどこにもなかった。




「......でも、」


「好きだよゆうり」




一人になりたくない。

りょうすけとずっといたい、



彼はすてきな家族に囲まれて豊かな生活を送ってきたから、ずいぶん素直にものを言うことができたけど、

僕は自分の意思を伝えたり、ワガママを言ったりすることに慣れていなかった。




おなかの中でとまった「すき」は、出て来ようとはしない。




「キスしてほしい?」




じっと見つめている僕に、彼がふざけたように笑う。

いつの間に心を読めるようになったんだろう。



僕が頷くと、彼は驚いた顔をする。




「してほしい?ほんとに?」




問い詰められると恥ずかしくなって、赤くなって俯いた。



顔を上げるとくっついてしまった唇に、目を閉じて応えた。

しがみついた肩はあったかくて、僕は人生で初めて恋をしていた。





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作者名:なん | 作成日時:2017年4月28日 0時

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