ep5 ページ5
.
彼は一瞬落胆の表情を見せて、その後すぐに笑った。
「そう、でも俺は好き」
「.......ちがう、そーじゃなくて、」
目頭を押さえた僕を見て、彼が困ったような顔をして僕の頬を撫でた。
「内緒にしてたことがあるの」
これから、どうなるのだろう。
僕は意地の悪い人間だから、ほんとは黙っていたいけど、でもだめだった。
彼は幻滅して、もしかしたら怒るかもしれない。
「なーに泣いてんだよ」
頬を滑り落ちる涙を彼の指が拾う。
でも涙は止まらなかった。
生まれてはじめて、誰かに嫌われるのがこわいと思った。
「僕、ほんとは男の子なの」
堪え切れなくて、声を漏らして泣き出した僕を、
彼は突き放すことなく優しく抱きしめていた。
「.........そっか、」
情けない僕を励まそうと、彼の大きなひらが不器用に僕の髪を撫でる。
「なんだ、てっきり天使か妖精かのどっちかだと思ってたから、人間でよかったよ」
そんなのいらないのに、
無理しなくていいのに、
罪悪感が募っていくから、ひどい文句を連ねて出ていって、僕の恋心を打ち砕いてほしかった。
そうじゃないと、もっともっと好きになってしまう。
「それでも好き。だめかな?」
僕の肩まで伸びた髪を掴んで、彼は真面目な顔でそう言った。
見上げた僕は情けない泣き顔で、返事は望まなくてもひとつしかなかった。
.
430人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なん | 作成日時:2017年4月28日 0時