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その日彼は一ヶ月ぶり、夜も更けた頃に遊びに来た。
「家出した」
おっきい荷物を置いた彼はあっけらかんとそう言い放った。
「あ、そうだ。ゆうりにいいもの持って来たんだ」
おうち、帰らなくて大丈夫なのかな。
僕の作ったしょぼいご飯をおいしいと言ってあっという間に平らげた彼は、大きな白い箱から、きれいなドレスを何着か取り出した。
「そんな服ばっかり着てたらかわいい顔が勿体無いよ。ゆうりに似合う服を俺が選んできたから、きてみてよ」
「.........でも、」
こんなにきれいで、たかそうなドレス。
貧乏人には似合わないし、こんな高価なもの貰えない。
彼は立ったまま止まってしまった僕の頭を撫でて、きっと似合うから、と笑った。
かわいいピンクのワンピースを持たされて、小さな部屋の中でドギマギするだけの僕をみて彼が楽しそうに笑う。
「どうしたの?早く着てよ」
「.....あの、うしろむいてて、」
裸を見られたら大変だった。
男とバレたらこの関係も終わって、この暮らしも終わってしまう。
これは実はほんとはすごく危険なことで、ほんとはダメってわかってるのに、彼のことを突き放すことなんてできなかった。
彼はようやく理解したように顔を赤らめて、「お、おう、着たら言えよ」と後ろを向いた。
ふわふわのワンピースは丈が短くて、膝小僧が見えてスースーするし、恥ずかしい。
合図できずに、スカートの裾を掴んでじっとしている僕にしびれを切らした彼が振り返る。
俯いて彼の表情は見えなかったけど、彼は少し僕を眺めた後、指先で顎を上げた。
「きれいだよ」
「......そんなことない」
「好きだよ、ゆうり」
僕もすき、
すきだけど、だめなの、
声が出る前に彼によって唇を塞がれてしまった。
あつい口付けに腰がくだけてしまって、へなへなと座り込んだ僕を彼が強く抱きしめる。
「.......だめ、りょうすけのことは好きになれない」
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作者名:なん | 作成日時:2017年4月28日 0時