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イルミside
外見は見えても玄関に辿り着くまでにまた暫く歩くことになった。むせ返るほどの花が咲き乱れる庭園を抜ける。
「いつもの場所によろしくね」
Aが扉を開けると中に入ったリュビの灰色の尻尾が地面に沈んでゆくのが見えた。どうやらあそこに地下か何かへと続く階段があるらしい。
「適当に何処か掛けてて」
Aは棺桶を何処か別の場所に置き死角へと消えた。とりあえず一番身近なソファに座る。柔らかなビロードの触り心地が良かった。
「何かアレルギーとかそういうのある？」
「無いけど」
まぁ毒でも何でも平気だし。そういうものの心配はない。わかった、という返事と共にガラス同士がぶつかる音がする。
「はい、お待たせしました。今日は色々ありがとう」
しばらくして運ばれて来たのは花の浮かぶティーポットと二人分のティーカップ。それとクリームの上に小さな花が飾られたカップケーキ。
「あの棺桶の中に何が入ってるのか、って質問だったよね」
並べたカップにお茶を注ぎ終えるとそれを差し出される。受け取ったお茶の色は琥珀色をしていた。
「まぁ大体察しが付いているかもしれないけど、答えは人形。それもただの人形じゃなくて生きてる人形なの。ちゃんと立って、歩いて、喋ることだって出来る」
「人形……」
人形なら俺も針人形を作ったりするけど、それはただ針で操っているだけで、Aが言う生きる人形とは程遠いものに感じた。
花の乗ったカップケーキを齧る。甘すぎず、美味しかった。
「私はそんな人形達を作る人形技師。そんな人間が住んでいるから、此処は人形の舘なんて呼ばれてるんだけど」
Aはさほど興味もなさ気に一口お茶を飲み干す。
「今日は引き取りに来るはずだった客がいつまで経っても来ないから本人の家まで出向いたの。でも死んじゃってたら取りに来れないよね」
「なんか悪かったね、無駄足踏ませて」
「別に責めてないよ。イルミはただ頼まれただけなんだから」
いつの間にいたのかリュビがAの足元に寝そべっている。Aはケーキに乗った花をつまみリュビに差し出すと、桃色の舌がそれを舐めとる。
「人形、見てみる？」
「今日あの男のものになるはずだった人形」
思いついたように小首を傾げる。
「いいの？」
「構わないよ」
着いて来て、そう言うと棺桶を置いた部屋に導かれた。
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久坂朧@三色団子と朧は神(プロフ) - ずっと前から記憶に残る素敵な作品です……二周目読んで大号泣しながら携帯握りしめてました……。作者様ありがとうございます、この様な作品が再び読めて本当に嬉しいです。 (2020年3月20日 22時) (
レス) id: 059aca8b09 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 日本語も発想も舞台も物語も綺麗で美しくて、大好きな作品です。こんな素晴らしいお話を残してくださってありがとうございます。読むことができて幸せです。 (2020年1月26日 0時) (レス) id: 9668003c28 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 柴山犬さん» 此方こそ本当に有り難う御座いました！ (2019年4月29日 8時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - もうかなり前に完結した作品なのに、コメント本当にありがとうございます…！満月。碧蒼さんにうっとりしていただけて、私としても嬉しい限りです。また思い出したときにでも読んでやって下されば、本当に本当に幸いです…！ (2019年4月27日 22時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
満月。碧蒼(プロフ) - 本当にもう...息が出来ないくらいに最高でした！うっとりしてしまいました... (2019年4月22日 20時) (レス) id: d8fdca1aee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴山犬 | 作成日時：2016年9月4日 23時
