羊？ ページ5
あの朝以来、ほんの少しだけヒソカに対するAの態度が変わった。
それは会話をするとき眉間にシワを寄せなくなり、たまに目を合わせるようになったとか、そんな少しアレなものではあったが、変化は変化だ。
その変化は最早ヒソカに対する諦めからくるものだったが、少女の存在をまだまだ遊び甲斐がある玩具へと昇格させるには十分な変化だった。
.
5月1日
PM 20:48
「弟クンに会いたいな♥」
「絶っっっつ対に駄目」
仕事終わり。適当な所で食事でも、と入ったファミレス。なんの気無しに放たれたヒソカの発言により、向かいの席に座るAの表情が嫌悪の色一色に染まる。
「いいじゃないか♠別に取って喰おうっていう訳じゃ無いんだからさ♦」
「取って喰わなくても絶対襲って喰べる」
「わかってるね♥」
ねっとりと笑いながらヒソカはパスタをフォークに巻きつけた。
「でも真面目な話、顔がわからないといつかどこかでうっかり殺しちゃうかもしれないじゃないか♣」
「全然真面目な話じゃない…」
紅茶のカップを持ち上げたAは呆れた様に首を振る。
「でも要は顔がわかればいいんでしょ」
Aはカップを置き、テーブルの端に置いてあったアンケート用紙とペンを取る。
そして紙の裏に一生懸命何かを書いたと思うと、やがて完成したそれをヒソカに差し出した。
「…ほら」
「おや、何かな♦」
ヒソカはフォークを置き、差し出された紙を嬉々として受け取る。…が、絵を見た瞬間にすん、と目から光が消えた。
「…………」
たっぷり1分、ヒソカは穴が空くほどに絵を見つめる。…紙に書かれたこれは…これは……？
「……あぁ羊の絵かい？躍動感があるね♣」
「弟の似顔絵、なんだけど」
「…………」
…残念ながらヒソカに手渡された紙の真ん中に描かれた、歪な丸の中にいくつかの丸が歪に配置されたその絵は、誰がどう見ても人の顔に見えないものであることは確かだ。
「……ちょっと待ってね♣ボクが今まで勝手に勘違いしていたのなら謝るけど、キミの弟クンって…人間、なんだよね？」
「当たり前でしょう」
「…キミは本当に弟クンが好きなんだよね？」
「っ、だって似顔絵なんて描いたことないし…！」
顔を真っ赤にしながらAはヒソカの手から紙を取り上げる。
「会いたいなぁ、弟くん♦顔がわからないと殺しちゃうかもなぁ♥」
「…………」
…可哀想に、Aはもう、半分涙目だった。
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がー(プロフ) - 大好きです!!!更新待ってます！！！！！ (2019年11月11日 22時) (
レス) id: 8eb0f6b23c (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます。今回の作品は二人のそこはかとない切なさを表現していきたいと思っていたので、Kさんにその切なさを感じていただけて本当に幸いです。のろのろ更新ですが、どうぞ最後まで見守ってやってください…！ (2019年6月17日 22時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - 初めまして。切なくて素敵なお話にとても引き込まれました...！応援してます。 (2019年6月14日 10時) (レス) id: 8eeddf36f5 (このIDを非表示/違反報告)
柴山犬(プロフ) - 流-ながれ-さん» コメントありがとうございます！文字数は本当に毎回ヒイヒイ言いながら書いてます……。それでもこればっかりはどうしようもないので、書き手の技量の見せ所なのでしょうね…（遠い目）更新頑張ります！どうかどうか、最後までお付き合い下さいませ…！ (2019年4月9日 1時) (レス) id: f9baa8e5f4 (このIDを非表示/違反報告)
流-ながれ-(プロフ) - 文字数には自分も四苦八苦してますw色々大変ですよね…更新待ってます！ (2019年4月7日 17時) (レス) id: f58151c97d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴山犬 | 作成日時：2019年3月12日 22時
